• Georg Simon Ohm 's 1827 paper

    ”ボルタの電気回路”   -11、12/40
    The Voltaic Circuit

    11.これを確立することで、次にこの問題をさらに前へ推し進め、
    そして、第一に、同種の円筒状または角柱状の物体における電気の運動を考えたい。


    そこでは、その中心線に垂直で、各断面全ての領域に渡る位置すべてが、
    同時発生的に等価な検電力を有する。


    ゆえに、電気の運動はその中心線の方向にのみ発生できるのである。


    多数の断面により、無限小の厚さのディスク(円盤)に分割されたこの物体を考え、
    それで、検電力が、そのようなディスクのペア(対)に関して、
    各ディスクの全外周(円周)でほとんど変わらないならば、
    6節で与えた式 ♂ は、あるディスクから別のディスクへ通過する電気の量を決定するために適用できる。


    だが、これまでの節で述べてきた、無限小距離限定での作用の距離の制限により、
    その性質はかなり変更されるので、
    除数が無限に小さくならなければ、すぐにそれは消える。


    次に、横座標の原点について、一定不変で無限にある断面の一つを選択し、
    さらに、どこでもいいが、第一(の素子)から第二(の素子)までの距離をxで表わす
    と仮定するなら、
    dxはそこにあるディスク(円盤)の厚さを表わす。

    それをMと呼ぼう。
                       
    このディスクの厚さを、あらゆる場所で同じ大きさであると考え、
    さらに、ディスクM内で、時間tに表れる検電力をuと呼び、その横軸をxとするなら、
    結果として、一般的に、uはtとxの関数となるだろう。


    その上、x+dxとx−dxがxについて個々に置き換え可能なとき、
    uの値であるu’とu1を仮定すると、
    u’とu1は明らかに、ディスクMの両面の隣にあるディスク(円盤)の検電力を表わす。

    つまり、横軸x+dxにある一方をM’で、また、横軸x−dxにあるもう一方をM1で
    表わすということである。


    そして、ディスクMの中心から、ディスクM’とM1それぞれの中心への距離はdxである
    ということが明々白々である。(訳注1


    その結果、6節で与えられた式(♂)により、
    もしχがディスクM’とM1の伝導パワーを表わすならば、
      
    は、u’−u が+か−かにより、
    時間dt の間にディスクM’からディスクMへ、
    または後者から前者へ転送される電気の量を表わす。

    同じ方法で、M1とMの間の同じ伝導パワーを認めるとき、
      
    は、
    式の値が+のとき、M1からMへ通過する電気の量を、
    式の値が−のとき、MからM1へ通過する電気の量を表わす。

    ディスクMが微小時間dtに、物体内部で電気の運動から受ける電気の量の全変化は、
    結果として
      
    であり、
    さらに、この値が+であるとき、電気の量の増加を、
    また、この値が−のとき、電気の量の減少を示す。

    しかし、テイラーの定理によると、
      
    さらに、同じ方法により、
      
    その結果、
      
    となる。(訳注2)

    これによると、ディスクM内に存在する電気の量の全変化を正に発見したこの式は、
    時間dtの間、
      
    に変換される。

    ここでχはあるディスクから隣接するディスクへ流れる伝導パワーを表わし、
    それを均質な物体の長さ(方向)の至る所で不変であるべきものと考える。

    この値χが、無限小距離の作用により
    円柱状又は角柱状の物体の断面に比例するということが、
    ここで観測されるはずである。

    それゆえに、ωでこの面積を示し、
    さらに、残りの部分もχと呼ぶことで、その値χからこの要因を分離すれば、
    前者の式は次のように変わる。
      
    さて、ここでχは断面の大きさとは無関係な物体の導電率を表わす。


    そして、相対導電率と呼ぶべき前者とは反対に、物体の絶対導電率と名付けよう。


    今後、導電率という言葉がどこで無条件に現れようとも、絶対導電率として常に理解すべきである。


    これまで、ディスクが隣接する大気から受ける変化を考えてこなかった。

    だが、この影響は容易に決定できるかもしれない。

    例えば、横軸xにあるディスクの円周をcで表わすなら、
    そのとき、c・dxは大気に晒されるその表面部分となる。

    その結果、9節で述べたクーロンの実験によると、
    bcu・dx・dt
    瞬時dtの間に、大気中で電気が移動することにより、ディスクMに発生する
    電気の変化量である。


    ここで、bは大気の同時発生的性質とは独立してはいるが、同じ大気については一定の係数を表わす。


    それは、uが+のとき減少を、またuが−のとき増加を表わす。


    しかし、最初の仮定によると、
    この作用は、物体の同じ断面において、検電力の不均一を生じることはありえない。

    さもなくば、少なくともこの不均一さはほんの微量なので
    感知可能な変化がもう一方の量に生じることはない。−その環境はボルタの回路でほぼ推測されるであろう。

    ディスクM内の電気の量が瞬時dtに受ける全変化が

      
    であることにより、
    その部分は、周囲の大気により引き起こされるそれ(電気の運動)と同様に
    物体内部の電気の運動から生じるもので構成される。


    しかし、瞬時dtに生じるディスクM内の検電力uの全変化は
     
    であり、
    その結果、瞬時dtの間のディスクM内の電気の量の全変化は
     
    である。

    しかしながら、
    あらゆる環境下で、検電力の同じ変化は電気の量の同じ変化と一致する
    と考えられる。

    この観測が、
    同じ表面の異なる物体が、同じ電気量によりそれらの検電力にさまざまな変化を受けた、
    ということを示したら、
    そのとき、さまざまな物体の特性に一致する係数γを加えることになるだろう。


    熱との関係から物体へと借用したこの仮定は
    まだ体験上、解決をみてはいない。


    瞬時dtの間のディスクM内の電気の量の全変化について、
    ちょうど発見された2つの式を仮定し、
    さらに、方程式の全ての項を ωdxdt で割るならば、
      
    を得る。

    ここで検電力uはxとtの関数として決定されねばならない。


    (訳注1)これまでの説明を次の図に示した。
        

    (訳注2)原本のテイラーの定理による2つの展開式には印刷ミスがあったので、正しい式に直しておいた。尚、結果を出すまでの流れは次の通りである。
    f(x)のx=aにおけるテイラー展開は次の通り。(ただし、x=aで微分可能であること。)
    (1)
    ここで、u1=f(x−dx)であるから、a=x−dxより、x−a=dxとなる。

    これらを(1)に代入し、3項まで表わすと、


    となる。
    次に、u’=f(x+dx) であるから、a=x+dxより、x−a=−dxとなる。
    これらを?@に代入し、3項まで表わすと、

    となる。
    次にu1とu’の方程式を各辺加えると、奇数階微分の項が消えて

    を得る。


    12.前の節において
    瞬時dtの間に、ディスクM’とMのあいだに発生する電気の量の変化
      
    を見いだした。

    さらに、
    式が+のとき、通過方向が横座標の方向と反対であり、
    一方、式が−のときは横座標方向へ進むことを知った。


    同様に、その方向に関して同じ関係を保つとき、
    ディスクM1とMの間の遷移の大きさ(電気の量の変化)は
      
    である。

    これらの式において、
    同じ節で与えられる変形をu1とu’の代わりに、また同時にχの代わりにχωを代入すると、
    即ち、相対的伝導力(=導電率)に代わる絶対的伝導力(=導電率)となる。


    どちらの場合も次の式を得る。
      
    そこから、
    瞬時dtの間にディスクM内に一方から入ってくるのと同量の電気が、
    もう一方へ向かってそれから同時に押し出される、
    ということになる。

    横座標x上のディスク内で時間tに生じるこの電気の伝達、
    また単位時間当りに減らされる(一定の)エネルギーの伝達を、
    電流と呼び、Sでこの電流の大きさを表わすと仮定すると、
    そのとき、
      
    となる。


    さらにこの方程式内で、Sが+の値を示すとき、
    電流は横軸方向と反対方向に生じ、
    −の場合、電流は横軸方向に生じる。

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