音楽家がオクターブと呼ぶ和音はあまりにも明らかに耳を打つので、わずかなずれも容易に知覚できるということを、殿下はこれまでにお気ずきになられたことと思います。
このようにFの鍵盤を弾くことで
1オクターブ高いfの鍵盤は、聴覚のみの判断により容易にそれに調子を合わせられる。
もしこの音を発生するはずの弦が少しでも高すぎるかまたは低すぎると、
聴覚はすぐに過ちを犯してしまう。
そして、完全に調子の合った2つの鍵盤を押すこと以上に簡単なことはない。
このように、われわれは歌う場合に音声がちょうど1オクターブ高いか低いかの
一つの音からもう一つの音へ滑らかに移動することに気が付く。
しかし、F音からd音へ直ちに移るよう要求されたら、
例えば、普通の歌手ならば楽器の手助けが無いかぎり、
容易に間違ってしまうかもしれない。
F音に固定した場合、すぐにd音へ移行することはほぼ不可能である。
その上、F音をf音に調和させることは非常に容易であり、
そしてF音をd音に調和することは非常に難しい、
この相違の理由は何か?
その理由は既に行われた観察から明らかである。
それはこういうことである、
即ち、F音とf音は1オクターブの違いが有り、
さらにf音の振動数は正確にF音の2倍である。
この和音を認識するためには、あなたは1対2の比率のみを考慮しさえすればよい。
つまりそれは、私が以前に用いた点の表現によりすぐに目に印象付けたように、
同じ方法で耳に影響を与える。
そのとき、比率が簡単であるか、
小さな数で表現されればされるほど、
より明確に知識が姿を現し満足の感情をもたらすということを、
あなたは容易に理解するだろう。
その上、設計者らは慎重にこの主義(行動原理)に仕えている。
かれらは事情が許す限り、簡単にかれらの仕事でそろって比率を使用する。
この知識は明らかでありがたいので、
彼らは通常、ドアや窓の高さを横幅の2倍にし、
至る所で小さな数で表現可能な比率を使用する。
同じことが音楽でもうまく適用できる。
理性が音と音との間に存在する関係を認める限りにおいてのみ、和音は気に入られる。
そして、それは小さな数で表現できるので、この関係はよりいっそう容易に理解可能なのである。
では、ユニゾンにおける2つの音の意味する同等の関係に続いて、
2対1の比率はおそらくもっとも単純であり、
これこそが1オクターブの和音を備えているのである。
それ故に、この和音があらゆる他のコンソナンス(協和音)以上に多くの長所を持つことは、
明らかである。
このように、和音または音楽家により命名される2つの音の間隔を説明することにより、
直前の音よりも1以上オクターブが高いF、f、
、
、
のような
さまざまな音を考えてみよう。
fからF、
からf、
から
、
から
の間隔が1オクターブなので、
からFの間隔は2オクターブ、
からFの間隔は3オクターブ、
からFの間隔は4オクターブである。
さて、F音が1回振動する間に、f音は2回振動し、
音は4回振動し、
は8回振動し、
は16回振動する。
それ故に、1オクターブは1:2の比に一致し、
2オクターブは1:4の比、3オクターブは1:8の比、
4オクターブは1:16の比でなければならない。
そして、1:4の比は1:2の比ほどには簡単ではない、
というのはそれ(1:4の比)はそれほど目立たないので、
2オクターブは1オクターブのように容易に耳で知覚できない。
まして3オクターブは知覚できず、4オクターブでは全く知覚不可能である。
それ故に、ハープシコードの調律で、
あなたがF音に調整するとき、
単純なfのように2オクターブの・に調律することは容易ではない。
まして、中間のオクターブを経て音を上げずに、
3オクターブの
や4オクターブの
に調律することはより困難である。
同様に、これらの和音はコンソナンス(協和音)という用語で理解される。
そして、ユニゾン(同音)のそれがもっとも単純であるように、それらは次の段階に従い変化するのである。
1度、ユニゾン、1:1の比率で示される
2度、隣接するオクターブ、1:2の比率
3度、2倍のオクターブ、1:4の比率
4度、3倍のオクターブ、1:8の比率
5度、4倍のオクターブ、1:16の比率
6度、5倍のオクターブ、1:32の比率
など、音が知覚可能な限りのもの。
そのようなものが、われわれがこれまで案内してきた知識、
コンソナンス(協和音)と呼ばれる和音である。
しかし、これまでのところ、われわれはコンソナンス(協和音)の他種について、
まして音楽において使われるディソナンス(不協和音)について何も知らない。
私がこれらの説明を続ける前に、
私は、2倍振動を含む音がもう一つの音に含まれるという、
2つの音の間隔を与えるオクターブという名前に関する一つの所見を追加する必要がある。
あなたがオクターブC、D、E、F、G、A、B、cにたどり着く前に、
7度上げるハープシコードのプリンシパルストップ時
(principal stops:オルガンの主要音栓の閉鎖)のその理由をあなたは理解する。
Cを最初に数えるとcは8番目であるからである。
そして、この分割は次の手紙で説明される性質の一定の連続する音の間隔に依存する。
1760年5月3日