自然哲学の諸問題についてのドイツ王女へのオイラーの手紙

 

他の物体と無関係な仕方で置かれた物体の場合に戻ろう。


いかなる原因であってもよいが、ある運動を受けた物体を仮定してみよう。

その後それに何が起きるのだろうか?

それは運動を続けるのだろうか?

さもなくば、それは静止状態に、またはある時間の後に急に元へ戻るのだろうか?

と、われわれの問いかけが続く。


あなたは、
これがいくつかの重要な質問であること、

 さらに物体の運動に関するあらゆるわれわれの研究がそれに依存することに気づくはずだ。


推論によってわれわれがそれを解決することができるかどうか調べてみよう。


物体は、それと全てのその部分が同じ場所にある限りは、静止状態にある。


そして、その物体またはそのある部分だけがある場所から他の場所へと通過するとき、

 それは運動状態にある。


次に、運動状態には考慮すべき2つのもの、方向と速度がある。


方向は、物体が運ばれる方へ向かう間隔
(the space)であり、

 速度は、それが一定の時間に移動することによる、多いか少ないかの、間隔(the space)である。


わたしが最も満足の行く説明によって伝えることができる以上に、

 あなたが既にこれについてより公正な考えを持つと、私は確信する。


物体が同じ方向を維持する限り、それは一直線に動く、

 ということに、わたしは注目するだけである。

 −さらに、逆に言えば、物体が一直線に動く限り、それは同じ方向を維持する。


しかし、それが曲がって進むとき、それは絶えずその位置を変える。


そのとき、もし物体が(Fig3)曲線ABCの運動をするならば、それがAにあるとき、その方向は小さな線Aaであり、Bにあるとき、その方向は小さな線Bbであり、Cにあるとき、その方向は小さな線Ccである。


これらの小さな線を作ってみよう。


真っ直ぐな点線AL、BM、CNによりその延長を表わす。


そして、物体がAを通過するとき、その方向は直線ALである、

 ということが確認されるだろう。


なぜなら、もし物体がAで持っていた同じ方向を維持するならば、

 それは一直線ALに移動するからだ。


そのとき、それが連続してその方向を変化する限り、それが曲がって進むことは明らかである。


さらに、それがBに、続いてCに到達すると、
 それがそれる方向は直線BMとCNによって表わされる。


物体は、それが同じ時間に同じ空間を通過して移動するかぎり、

 その運動中、同じ速度を維持する。


この運動は一様のと呼ばれる。


こうして、例えば、
 もし物体が常に毎秒10フィート(304.8cm)進む方法で運動するならば、
  われわれはこの運動を一様な(運動)という。


もし別の物体が1秒間に20フィート(609.6cm)進むならば、
 その運動もまた一様である。


しかし、その速度は前のそれより2倍大きいだろう。


私が今、運動の一様性について言ったことから、

 何が一様な運動ではないのかを理解することは容易である。


というのは、物体の速度が等しくないとき、その運動は一様ではない。


物体の速度が増加しつつあるとき、その運動は加速されていると言われる。


さらに、それが続けて減少しているとき、われわれは、それが減速されるという。


後者の場合、速度はその度合いで減速されていくだろう、

 即ち、物体はすぐに静止状態になるだろう。


運動する物体の速度と方向について、こうして注目してきたので、

 原因がなにであろうと運動状態にある、と私が仮定する単一の物体の場合に戻ろう。


それが運動し始めるやいなや、それは一定の方向と一定の速度を得たはずである。


さらに、その後も同じ方向と同じ速度を維持するのだろうか?

 それとも、何らかの変化を受けるのだろうか?

  という疑問がある。


われわれは、それは瞬時に静止状態に変えられるであろう、と断言することはできない。


というのは、いかに短くとも、あらゆる運動に継続時間を想定したら、
 運動を続けることはできないからだ。


ここで、運動が続く限り、方向も同じくそのままであると言うことは確かである。


事実、物体が、他方よりもある方へと、進路の外へ進むべき理由を考えることはできない。


そして、理由も無く通り過ぎていくものは何も無いので、

 問題の物体は常に同じ方向を維持し、

  また、その運動は、問題の解決に向けた大きな歩みである一直線で進むだろう
   と
いうことである。


さらに、私が語るその物体の速度は変化できない、ということが主張される。


さもなくば、その場合(物体の速度が変化する場合)、
 それは増加か、もしくは減少しなければならない。


そして、この変化を生み出す能力が(原因)とする理由は無い。


ゆえに、この物体が常に同じ速度で、且つ同じ方向に運動を継続するであろうこと、

 または、それが、脇へそれることなく、
  続けて一直線に、且つ常に同じ速度で進むということ
が結論される。


そのとき、この運動は、
 常に一直線に、且つ緩んだり遅れたりすることなく同じ速度で行なわれる。


それゆえに、物体は決して静止状態を変えることはない。


もしそれになんらかの影響を与えるような他の物体がないならば、

 わたしが単一と仮定した物体について言ってきたことは、

  わが地球にも同じ仕方で起きるだろう。


というのは、そのとき、もしそれら(影響を与える他の物体)が存在しなかったなら、
 それは同じことになるだろうから。


これで、疑問は解決される。


その運動を変える能力のある何らかの外的な要因が干渉しない限り、

 運動中の物体は同じ方向と同じ速度を常に維持する。


それゆえに、物体がある外的な要因の作用を受けない限り、

 もしそれが一度静止状態になったとしたら、それは静止のままであるか、

  または、もしそれが一度運動状態になったなら、
   常に同じ速度で一直線の方向に動かされるだろう。


そして、これは、全ての運動の科学が認めねばならない、
 第一にして主要な自然の法則である。


それから、われわれはすぐに次の結論を引き出す。


即ち、静止していた物体が運動状態になったり、

 曲がって運動する物体、または速度が変化する物体をわれわれが見る度毎に、

  外的な要因がそれに作用しているのだ、

   ということは確かである。


おそらく方向や速度により生じる変化はない。


しかし、外的要因の働きがあるものは別である。


     1760年11月1日


訳注)この手紙は、ニュートンの運動法則の第二、”物体に力が働くと、その力の方向に加速度が生じ、その加速度の大きさは力に比例して、慣性質量に反比例する。”の前半部分の説明である。

 

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