自然哲学の諸問題についてのドイツ王女へのオイラーの手紙

 

ゆえに、海の干満が月の引力を原因とするということはもはや疑うべき問題ではない。


しかし、ここに片付けるべきもう一つの困難が残っている。


なぜ、海の運動は新月と満月の時、他の三日月の時よりもいっそう顕著になるのか?


もし新月または満月のとき、三日月のときよりも月が地球により近かったなら、

 月の接近がその力を増大するので問題は難しくない。


しかし、月は、あるときは多めに、またあるときは少なめに地球に接近するけれども、

 その相違は常に非常に小さいので、海の干満時にかなり大きな変化を起こすことはない。


一方で、この相違は新月と満月により統制されていない。


そして、
月が新月と満月のときよりも、中間の三日月がわれわれにより近いはずだ

 ということが起こるかもしれない。


それゆえ、われわれは
新月と満月の時に海の干満を増加し、
 且つ、中間の月の時に減少する可能性のある
他の原因に頼るべきだろう。


引力の仮説は最初にわれわれに次のことを示す。


つまり、それは月の引力を加えた太陽の作用であり、

 海の干満によりわれわれに示されるあらゆる現象の完全な解決を提示する。


事実、わたしが月が海に影響を及ぼす力について言ってきたことは、

 同じく太陽に適用できるのである。


それらが多少太陽から離れることにより、

 その引力の力は同様に地球の全ての部分に不均一に作用する。


それは主に地球の運動を統制し、その軌道を回らせるので、

 太陽の引力は月の引力よりもさらに一層強烈である。


それは、引力が海に伝える運動のため、

 −わたしが既に月の影響を説明する場合にあなたに示したように−

  その中心よりも多少太陽に向かって引かれる地球の表面の
   さまざまな場所へのその作用の不均一さによる。


もし地球の全ての部分が均等に引かれたなら、それらの相互の状況の変化は発生しないだろう。


しかし、太陽の力は月のそれよりもはるかに大きい。


それにもかかわらず、
月よりもわれわれから300倍も遠い太陽の大きな距離のため、

 地球のさまざまな場所の不均等さはより小さい。


太陽に向かって引かれる地球の中心とその表面上の場所の力の相違は、それ故に非常に小さい。


そして実際に行われた計算から、

 これらの場所の上にある月の力よりもほぼ3倍以下であることが知られている。


そのとき、太陽の引力の力だけが、同様に海の干満の原因となり得るだろう。


しかし、それはこれらの2つの発光体を合わせた影響の作用である力の約3倍以下であろう。


次に、海の干満が太陽と月の両方の力により生みだされること、

 または、実際に、月の潮汐と太陽の潮汐と呼ばれる2つの潮汐、

  つまり一つは月により、もう一方は太陽により引き起こされることは明らかである。


ほぼ3倍大きい月のそれはその運動に従い、1日から次の日まで45分遅らされる。


即ち、もしそれが単独で存在するか、月がないならば、

 太陽の運動に従うそれは、一日の同じ時間に一致するだろう。


これらの2つの潮汐は、月と太陽共に、海の干満を引き起こす。


しかし、両者が別々に海の水を交互に上昇し且つ下降させるので、

 2つの原因が連動して海に上昇と下降させるということが起こるとき、

  その干満はよりいっそう大きくなる。


しかし、一方が海を上昇しようとするとき、

 同じ場所で他方はより低くなろうとするとき、

  それらが反対の方向に作用するとき、

   そのとき一方は他方によって減少させられ、さらに月の潮汐は太陽により弱められる。


これらの2つの潮汐が互いに助長または抑制することより、

 そのとき干満が多少変化するのだろう。


さて、新月のとき、
太陽と月は天空の同じ場所にあり、
 それらの影響は完全に調和しているので、

  2つの潮汐の合計に等しくなり、干満はそのとき最大になるはずである。


月が太陽の反対にあるとき、
月が前とは真逆の位置にあるけれども、

 われわれは月が同じ効果を生み出すことを知っているので、

  これは満月の時にも同じく発生するだろう。


それゆえに、干満は、
最初と終わりの三日月のときより、

 新月と満月のときのほうが大きくなるはずである。


つまり、そのとき太陽の力は水を低くするように、
 また月の力はそれらを上昇するように力を及ぼす。


それゆえに、これらの時期には、
干満があまり見られなくなるはずである、

 ということが証明される。


そして、実際の観測結果がそれを認めている。


それは計算によりもっと証明されるに違いない。


即ち、これらの物体が赤道上にあるか、地球の2つの極から等しい距離にあるとき、

 月または太陽の影響がいくらか大きくなる。


つまり、3月と9月の月末近くの昼夜平分点の時におきる。


その時、潮汐が最強になることも発見される。


そのとき、これらの力が海のさまざまな部分に不均一に作用するのと同程度に、

 潮汐または海の干満が月と太陽の引力の力に起因することは、何の疑いもないことである。


古代人をおおいに迷わせたこの現象の適切な説明は、


引力の仮説、
 または全ての天空の物体の運動を発見させた万有引力を完全に確定することである。


     1760年
10月14日

 

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