自然哲学の諸問題についてのドイツ王女へのオイラーの手紙

 

われわれの大気への月の圧力による海の干満を説明するデカルトの理論はうまくいかなかったが、

 月が地球に影響を及ぼし、
  その結果、海にも(影響を)及ぼす引力にその原因を見出すには手ごろであった。


私が示したように、

 天体の引力の力は非常に多くの他の現象により既に十分に立証されてきたので、

  海の干満がその影響であるはずであることは疑問の余地がない。


月が他の天体同様に、それらの質量に正比例し、距離の二乗に逆比例して、

 全ての物体をひきつける特性を与えられていることが証明されるな否や、

  その作用が海に拡張されるに違いないことは容易に理解される。


更に、最小の力で流体をかき回すことが可能であることを

 あなたは度々気づいていたに違いない。


それ故に、

 月の引力の力が、われわれが想像するような干満と言う名で
  われわれに知られる攪拌を
海の中に生じる能力があるかどうかを問うことが、

   いまだ残っている。

添付図(Fig1)に地球と月を表わそう。

Aはわれわれが地球上で月を見る場所である。

Bは正反対またはAの反対側である。

Cは地球の中心である。


A
点はB点よりも月により近いので、
 
Aの物体はBの同じ物体よりもより強く月に向かって引かれる。


そしてもし、地球の中心
Cに置かれた第3の同じ物体を仮定すると、

 物体Aは物体Cよりもより強く月に向かって引かれ、

  そして後者(C)は更に物体Bよりも引かれるだろう、

   ということは明らかである。


なぜなら、物体
Aは月により近く、
 さらに物体
Bは物体Cよりもっと離れているからだ。


しかし、
EFに置かれた同じ物体は、

 ほとんど地球の中心Cにある物体同様に、

  それらは3つとも全て月からほとんど等距離にあるので、

   月によってかなり引きつけられる。


ゆえに、われわれは、地球表面に置かれた物体が
 全て等しく月に向かって引かれるわけではないことを知る。


この引力のばらつきは月
Lの中心からのそれらの距離のばらつきによる。


そのため、その距離が少ないので、物体は月によりもっと強力に引きつけられる。


そしてこの距離がより大きいと、逆のことが起こる。


別々に置かれた物体への月の作用におけるこれらの相違のため、

 われわれはここで第一に注意を払わねばならない。


というのは、もし全ての物体が等しく月に向かって引かれるなら、

 それらはこの力に等しく従うだろうし、混乱はそれらの相互の位置で生じえない。


あなたは、完全に等しい力により引かれるいくつかの荷車を思い浮かべるとよい。


それらは常に同じ順序と同じ距離を保つことにより、路上を進むだろう。


しかし、それらの内のあるものがより元気に前進するやいなや、

 他のものはさらに遅くなり、順序が乱されるだろう。

  同じことが月によって引かれるさまざまな物体の場合にも起こる。


もしそれらが全て、同じ度合いでその発光体(月)の作用の影響を受けるなら、

 それらは同じ相対的な位置を保つだろう、

  そしてわれわれはそれらの中で変化を感じないはずである。


しかし、それらが、その力がばらばらに飛び散ることができないようなひもによって

 お互いに引き付けられていない限り、

  それらが月に向かって引かれる力がそれらの各々のように変化するや否や、

   それらの順序や相対的な位置は必然的に変化する。


しかし、流体のあらゆる粒子は容易に互いに分離され、
 さらに一つ一つはそれが受ける影響に従うので、

  これは海の場合ではない。


海のさまざまな部分に作用するこの力がお互いに等しくない場合、

 攪拌または乱れがその結果生じるに違いない、ということは明らかである。


月の中心から不均一な距離にあるために、

 海のさまざまな部分が月により不均一に引かれることを、

  われわれは正に調べてきた。


それ故に、海は月の力により乱されるに違いない、

 つまり、継続的に地球との間のその位置を変えながら、

  さらに約24時間と3/4でその周りを回転しながら、

   海におなじ変化を受けさせ、

    24時間と3/4の同じ期間で同じ現象を起こさせる。


それ故に、干満は一日と3/4時間遅らされ、

 それは、規則的に繰り返される経験により確認される。


いまやわれわれは、

如何にして、6時間と11分の間隔で交互に続いて起こる海の上昇と下降が、
 月の力の変動に起因するかを知りさえすればよい。


これは次の手紙で検討しようと思う。


     1760年10月4日

 

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