自然哲学の諸問題についてのドイツ王女へのオイラーの手紙

 

その一面に広がる山や谷のため、地球の表面は平らではないが、

 しかしながら、海のある所はどこも完全に水平である。


水面は常に水平であり、物体が落下する方向の垂直線はそれに鉛直をなす。


そのときもしも全球体が水で覆われていたなら、
 人が住む表面のどの場所でも垂直線は水面に鉛直となるだろう。


よって、地球を表わす図
ABCDEFGH(Fig30)で、
 その表面はどの場所も水平であるとする。


A
における線aAは垂直である。

Bにおける線bB、
 Cにおける線cC、
  Dにおける線dD、
   Eにおける線eE、
    Fにおける線fF、Gにおける線gG、
     そして残りも同じ。


さて、どの場所でも垂直線は

 何が上向きまたは下向きと命名されるべきか、

  を決定する。


そのとき、Aの人にはA点は下向きであり、a点は上向きであり、

 そしてFの人にはF点は下向きであり、f点は上向きである。


そして、地球表面上の他のどの場所でも同じである。


aA、bB、cC、dD他全てのこれらの垂線は、さらに引力または重さの方向と呼ばれる。


なぜなら物体は普遍的にこれらの線の方向に落ちるからである。


これより、gにある物体はgG線の方向へ落下するだろう。


その結果、物体は普遍的に地球に向かって、さらに地球の表面に、

 もしそれが水ならば、水の表面についても、

  鉛直に落下しなければならないことは明らかである。


それ故に地球のどこであろうと、

 物体はその表面へ向かい落下するので、

  われわれは地球へと向かう所または、その最も近くの所を下方向と呼ぶ、

   ということがある。


さらに、反対方向に位置し、地球から最も離れた上方向でも同じ。


そして普遍的に、地球に人間の足は押しつけられているのであり、
 彼らの足は下方向で彼らの頭は上方向である。


もし地球が完全な球体ならば、

 内側に生成される全ての垂線aA,bB,cCは、
  地球の中心である球体の中心で出会うだろう。


この理由により、われわれは普遍的に物体は地球の中心へ向かう傾向があるというのである。


よって、あなたがどこに居ようとも、
 下方向とは何か?とたずねられたとき、
  答えは、地球の中心へ最も近く接近することである、でなければならない。


事実、あなたが地球に穴を掘ろうとしたら、
 場所がどこであろうと絶えず作業を続け、
  常に下方向へ下方向へと垂直に掘ることで、あなたはついには地球に中心へ到達するだろう。


モーペルテュイに言われた地球の中心へ到達する穴の考えを

 ボルテールがいかにいつも嘲っていたか、

  をあなたは思い出すだろう。


(だが、)3956イギリスマイル(約
6365Km)の深さまで掘る必要があるので、
 そのような計画は決して実行できないというのは本当である。


しかし、結果となりそうなものを発見するため、それを想像することは問題ない。


では、
Aで掘られ、地球の中心Oを越えて直径の全長まで続けられ、

 われわれの正反対の者(antipode)Bまである、
  そのような穴(Fig31)を仮定してみよう。


つまり、われわれはこの穴に沿って降りるのである。


中心
Oに到達する前に、例えばE点に到達したなら、
 地球の中心
Oはそこで下方向にあるだろう。


そして何かがわれわれを支えない限り、われわれは
Oへ向けて落下する。


しかし、中心を越えて
Fへと通過した場合、

 例えば、われわれの引力はそのときOへ向かう傾向を有する。


この点(F)や
A点はよりいっそう下方向に見え、B点が上方向となる。


よって、たとえわれわれが
AからBへ直線方向に通過したはずであっても、
 上方向と下方向という言葉は、突然意味を変えるだろう。

われわれがAからOへの通過の途上にある限り、われわれは下がっていく。


しかし、
OからBへいく場合、われわれは実際上昇している。


つまり、われわれは地球の中心へと移動している
 −即ち、われわれの引力は常にその方向に向いているのである。


それ故に、もしわれわれが
EまたはFから落下するならば、
 われわれは常に地球に中心へ向かって落下するはずである。


B
にいるわれわれの正反対の者(antipode)は、
 もしかれが
BからAへ通過したいなら、正確に同じ状況にある。


B
から中心Oへかれは下降しなければならないだろう。

しかし、OからAへそれは全て上昇である。


これらの思考はわれわれを引力または重さを定義することへと導く。

それは全ての物体が地球の中心へ向かわされる力である。


A
にある同じ物体はAOの方向に向かわされる。


もし
Bへ運ばれるならば、引力の力により他方の直接の反対側であるBOの方向へ向かわされる。

そのとき、

 引力または重さはあらゆるわれわれの業務や事業活動に非常に本質的な影響を与え、

  且つわれわれ自身の体でさえも、普遍的にその影響を感じつつ、
   それにより刺激を受けるので、

    引力の方向により、われわれはどこででも
     上方向と下方向、上昇と下降という言葉の意味を規定する。

1760年8月29日

 

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