自然哲学の諸問題についてのドイツ王女へのオイラーの手紙

 

引力が、われわれが知っているあらゆる物体の一般的な特性であること、

 そしてそれが物体を下に向かって押す克服しがたい力の効果から成り立つことを

  あなたは正に見てきた。

哲学者たちは、目に見えない方法で物体に作用する力が実際に存在するのかどうか、

 または、無理に下降させられるという自然の命令のような、

  物体の真の性質に内在する内部的な特質なのかどうか、

   熱心に議論した。


問題は次の結論に達した。


もし引力の原因があらゆる物体の真の性質の中に見出されるはずであるならば、

 または、それ(物体)がそれ(引力)なしに存在するならば、

  この固有のものではない力(引力)のその作用が衰えるはずであるから、

   物体は重さがあることを止めるだろうか?


この解決を試みる前に、
 もっと注意深く引力に関わるあらゆる環境を検討する必要があるだろう。

私は最初に、

 あなたが物体の落下を妨げるため、それを支持するとき、

  もしそれ(物体)がテーブルの上で静止しているなら、

   その押す力は、それが落ちる傾向(性質)であるその力に等しい、

    と述べた。


そして、もし糸状のものがそれに添付されているなら、

 それが吊るされることにより、

  糸状のものはその力により、言い換えれば、その物体の引力により伸ばされる。


それ故に、もし糸状のものが一定の強度を持たないなら、それは破壊するだろう。


そのとき、全ての物体は

 それらを支える物質にある程度の力を及ぼし、

  それらの落下を妨げるということを

   われわれは知っている。


そしてこの作用は、正確には、
 もしそれが自由であったなら、物体を下降させる力と同じである。


一つの石がテーブルに置いてある時、テーブルは石により押される。

あなたが、手を押しつけようとして増えていくこの力を感じるためには、

 石とテーブルの間に手を置かねばならない。

  この力は物体の引力と呼ばれている。


そして、あらゆる物体の重量または引力は、

 共に物体が下方に押されるその力―この力が物体自身の中に存在しようと、
  その外に存在しようと−を示すので、

   同じことを意味することは明らかである。

われわれは物体の重量についてあまりに明白な考えを持っているので、

 さらに長くこの主題を続ける必要はない。


2つの物体が互いに繋がれているとき、それらの重さもまた加えられる、


それ故に合成した重さは個々の重さの総計に等しいと、

 私は述べるに留める。


これにより、さまざまな物体の重さが全く異なるのはもっともである、
 ということを
われわれは知るのである。


2つの天秤皿に置いた物体が等しい引力となるとき、

 平衡で静止するという特性をもつ天秤の助けにより、

  われわれはまた、それらを正確に計測し比較するためのある手段を有する。


これの比較を行うため、われわれは、

 1ポンドのような一定の確定した重さについて、さらに良い天秤による、

  ある安定した測定に賛同する。


あらゆる物体が重みをつけられ、

 さらにそれらの引力が、それらに等しいポンド量に従い、確かめられるだろう。


あまりに大きすぎて天秤の皿に置けない物体は、

 分割し、個々に重さを持った部分にするのがいいだろう。


あなたは個々を加えさえすればよい。


家全体の重さは、いかに巨大であってもこのように確かめられるだろう。

疑いなく、小さな金は大きさで上回る木片と同じだけの重さがある

 −物体の引力は常にそれらの大きさによって決められるのではないということの証拠−

  ということに、あなたは度々気づいていたに違いない。


非常に小さな物体が大きな重さをもつかもしれない、
 その一方非常に大きな物体は軽いかもしれない。


そのとき、あらゆる物体は、互いに全く異なる2つの測定が可能である。


一つは、同様にその寸法(
size)と呼ばれるその大きさまたは量を決定する。


この測定は物体の大きさまたは量の測定方法を教える幾何学の分野に属する。


もう一つの測定方法は、それらの重さが決定されることにより、全く異なり、

 物体が形成されるさまざまな物質の性質を区別するために役立つ。

あなたは容易に、全て同じ大きさまたは量の、
 異なった物質のさまざまな質量を考えることができる。


例えば、長さ、幅、高さが1フィート
( 30cm3 )である立方体。


そのような質量は、もしそれが金ならば、
 1330ポンド(
0.454k/ポンド×1330604kg)の重さとなるだろう。


もし銀ならば、770ポンド
(約350kgである。

もし鉄ならば、500ポンド(約227kgである。

もし水ならば70ポンド(約32kgだけである。

それが空気ならば、1ポンドの1/12以下である。(約38g)

これにより、

 物体を構成するさまざまな物質により、引力がかなり変わる、

  ということを、あなたは知る。


もしそれらが完全に理解されなかったならば、

 この相違を表現するため、

  われわれはあいまいに思われるきまった言葉を使用する。


よって、金は銀より重いと言われるとき、

 金1ポンドが銀1ポンドより重いと理解されるべきではない。


つまり、何であろうと1ポンドの物質は常に1ポンドであり、常に同じ重さを正確に持っている。


しかし、その意味は

 あるものは金でもう一方が銀という同じ寸法の2つの塊がある場合、

  金の塊の重さは銀のそれを越えるだろう

   ということを意味する。


金が水より19倍重いというとき、

 一方は金、他方は水の2つの等しい塊(質量)がある場合、

  即ち、金のそれは水のそれの19倍の重さを有する

   ということを意味する。


われわれがこのように自分を表わすとき、

 われわれは物体の絶対的な重さについては何もいわない。


われわれは比較方法により、さらに等しい寸法の塊(質量)を常に基準にして、

 言うだけである。


それらが等しいと提示された寸法が大きいか小さいかは重要ではない。

1760年8月25日

 

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