自然哲学の諸問題についてのドイツ王女へのオイラーの手紙

 

では、光を取り扱いながら、私は全ての物体に共通の特性−引力についての考察を続ける。


われわれは、支持するものがない場合、
 全ての物体、固体や流体は、下に向かって落ちる
ということに気づく。

編注)† 
光学のテーマは、オイラーによって第2巻で再開される。

私が自分の手に石を持っている。

もし私がそれを離すと、それは地面に落ち、地球に穴があったなら、遥か底まで落ちるだろう。

私が手紙を書く間、私の紙はテーブルにより支えられていなければ地面へ落ちるだろう。


同じ法則が、われわれが知る全ての物体に適用される。

もしそれが支持されないか、または、とにかく止められないならば、地面に落ちないものはない。

この現象の原因またはあらゆる物体のこの傾向(性質)は、引力と呼ばれる。


物体が重い、または引力を有すると言われるとき、
 それらが下に向かって落ちる傾向(性質)を有することを意味し、
  さらに、もしわれわれがそれらを支持するものを前もって取り除いておくならば、
   実際、落ちるだろう。

古代人はこの特徴をほとんど知らなかった。


煙や蒸気のように上昇する傾向を生来有する物体があり、

 さらに、それらと落ちる傾向を持つ物体を区別するため、

  光と呼ぶ物体がある、とかれらは信じた。


しかし、これらの物質を高く上昇すのが空気であることは、実験により発見されてきた。


というのは、空気中の無の空間で、

 空気ポンプにより煙と蒸気は石と同様に下降すること

  およびこれらの物質は他と同様にそれ自身の性質、つまり重さがあることが良く知られている。


それゆえに、それら(
煙と蒸気)が空気の中で上昇するとき、

 水の中に投げ込まれた木の丸太に作用するのと同じ法則が、それらに作用する。


その重さにかかわらず、あなたがそれをそのままにして泳ぐやいなや、

 それ(木の丸太)は水ほど重くないので、(水面で)跳ねる。

  そして一般的な法則によって、全ての物体はそれら自身よりも重い流体の中で上昇する。

もしあなたが容器一杯の水銀の中に

 鉄や銅や銀や鉛でさえも投げ込んだなら、それらは表面に浮く。


そしてもしあなたがそれらを無理やり押し下げるなら、放っておくとそれらは再浮上する。


金だけは、水銀よりも重いので沈む。


そして、水中及び他の流体の中で浮上する物体がある場合、

 それらの重さにかかわらず、

  単にこの理由により、

   即ち、それらは水またはこれらの他の流体ほどに重くない。


煙や蒸気のような空気よりも重くないある物体がその中で上昇するはずである

 ということは驚きではない。

私は既に、
空気自身が引力を有し、
 この引力によってバロメーター(大気圧計)の水銀を支えている

  ということを述べた。


それゆえ、全ての物体に引力があると断言されるとき、

 全ての物体は例外なく、真空中で下降するであろう

  ということが理解されるはずである。


私は、それらは等速度で落下するいうことも思い切って加えたい。

つまり、羽と金は(空気を)排出された容器内では同じ速度で落ちる。

モルタルから剥がれたうろこは石のようにすぐに地面に落ちない、

 つまり、私が手から落としても空気中を上るということは、

  物体のこの一般的な特徴に反するかもしれない。


しかしながら、うろこに重さがないとは考えられない。


つまり、火薬の力が爆弾を高く投げ上げることは明らかであるが、

 しかし、これのために、それ(爆弾)は疑いなく直ちに地面に落ちるだろう。


そして、われわれは、事実、それ(爆弾)が常に上り続けないことを知っている。


しかし、それ(爆弾)を上へ運ぶ力が使い果たされるや否や、それ(爆弾)は急速に落下し、

 それ(爆弾)が出会う全てのものに衝突する。−つまり、その引力の十分な証拠である。

それ故に、全ての物体に引力があると断言するとき、
 それらが停止させられたり、それらが高所へ投げられる可能性を否定することを意味しない。


しかし、これは外部の力により影響される。

そして、全ての物体が何であろうとも、

 静止か、運動しない状態のままなら、もはや支持するものがない場合、確実に落ちるだろう、

  ということが間違いなく続く。


私のアパートメントの地下には地下貯蔵庫があるが、
 床が私を支え、底に落下することから私を守っている。


急に床が粉々になってしまい、

 同時に地下貯蔵庫のアーチが倒れたなら、

  私は避けられずにその中へとまっさかさまに落とされるにちがいない。


なぜなら、われわれが知っているあらゆる他の物体と同様に

 私の体には引力があるからである。


“われわれが知っている“と私は言ったが、おそらく重さを欠いた物体があるかもしれない。


つまり、おそらくは光そのもの、4大要素の火、電気の流れや磁気の流れ、
 または以前は人間のように見えた天使の体のようなものである。


このような物体は下方へ落下しないだろうが、

 床が突然その下へと移動させられたなら、

  確実に地球上の大気中を移動するだろう。

これらの物体を除いて、実験によりまだ確かなものとなっていない引力というものは、

 それらの下降を妨害するものがなにもないとき、

  それらが皆下に向かって落ちようとする傾向(性質)を有し、

   且つ実際そのようになるという事実により、

    われわれが知るあらゆる物体の一般的な特性として考えられるだろう。

1760年8月23日

 

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