自然哲学の諸問題についてのドイツ王女へのオイラーの手紙

 

凸レンズは、わたしがあなたの前に置いておく様依頼した

 ある非常に注目すべき点を備えている。


私はここで一般的に端よりも中心が厚いこれらのレンズについて述べる。


そのレンズは、両表面が凸であるか、または、片面が平面で他が凸か、

 または、最後に片面が凹で他が凸かであるが、

  凸面は凹面より優れ、または端よりも中心でより大きな厚みをもつ

   という特徴を備えている。


さらに、レンズが球面の形をもつことを必要とされる。

それらは次の特徴をまず有する。


太陽に晒されると、その発光体の鏡像であり、
 さらに発光と燃焼という特性と共に授けられた焦点を
レンズの後方に現す。

その理由は、太陽から出てきて、この表面に向かう全ての光線は、

 レンズの屈折により1点に集められるからである。


物体がそのようなレンズに晒されると、何であろうと同じことが起こる。

それは常にあなたが物体自身の代わりに見るその鏡像を表わす。

次の図は私が言ったことをよりわかりやすくするだろう。

ABCD(Fig25)を、物体EGFの前に置かれた凸レンズとしよう。


それはE,G,Fの3点をよく考えるのに十分であろう。


ガラスに向かうE点からの光線は、空間AEBに含まれ、

 点eで合流するように、全てが屈折により空間AeBに集められる。


同じ方法で、レンズに向かい、空間AGBを満たすG点からの光線は

 空間AgB内の屈折により理解され、点gで合流する。


最後に、角AFB内のレンズに向かうF点からの光線は
 f点で合流するよう屈折される。


このようにして、レンズの後ろに逆転した姿勢の鏡像efgができる。


そして、あたかもその物体がefgで反転されたかのように、
 さらに、
距離Dgが距離CGよりも何倍も小さいかのように、

  鏡像の後ろのO点に置かれた目は影響を受けるだろう。

鏡像efgの位置を決定するためには、

 われわれは物体の距離同様にレンズの形にもよく注意しなければならない。


最初に、
レンズが凸状であればあるほど、
 言い換えれば、中心CDの厚さが端の厚さよりも大きければ大きいほど、

  鏡像はその表面により近くなるだろうということに、

   気づくはずである。


距離に関しては、
 もしあなたが物体EFをレンズへさらに近づければ、
  その鏡像efは逆にそれ(レンズ)から離れる。


物体がそれ(レンズ)から非常に離れているとき、
 それよりも鏡像はレンズに近づくことはできない。


そのとき、太陽のそれ(鏡像)がレンズの焦点と呼ばれるように、

 それ(焦点)は同じ距離にある。


その上、物体が非常に離れているとき、鏡像はまさに焦点の中に落ち込む。


そして、あなたが物体をレンズに近づければ近づけるほど、
 鏡像はそれからよりいっそう離れる、
  
つまり、屈折光学の法則に従って、あなたが常に鏡像の位置を決定できることにより、

   どんな距離にある物体に対しても、あなたがレンズの焦点を知っているということ、

    即ち、それに晒された物体に火をつけるのに十分小さな空間で、

     太陽の光線を集める距離を規定できるということである。


光線が合流する点は、これまで延べてきたように鏡像の位置である。


ここで、この点は実験により容易に発見される。


そのようなレンズは1インチの距離に、
 また他のものは1フィートの距離に、また他のものは10フィートの距離に、等々、
  その焦点を持ち、
   
さもなくば、より簡潔に、1インチのレンズ、1フィートのレンズ、
    または10フィートの焦点を持つ、

     というように、レンズの異なった呼称はそれに由来する。


長い望遠鏡は、非常に長距離の焦点レンズを必要とし、それらを正確に作る事は非常に難かしい。


かつて私が、ペテルスブルグのアカデミーへ送った1枚のレンズに150クラウンを支払った。


それは600フィート(
0.3m/foot×600feet180m)の距離の焦点をもつ。


わたしは、それは大した価値が無かったと確信している。


だが、かれらはその珍しさゆえにそれを手にしたいと望んでいた。

図25において、鏡像efgの描写が本物であることを満足するためには、

 あなたは、その場所に白い紙片、
  つまり色が依存するさまざまな種類の振動の影響を受けやすい粒子

   を置きさえすれば良い。


そのとき、e点で合流する物体のE点からの全光線は、

 E点が持つのと同じ振動運動で紙の粒子に圧力を与えるだろう。


そしてその結果、あなたはE点と同じ色のe点を見るだろう。


同様の方法でgとf点が物体のGとF点と同じ色となるだろう。


そして、さらにあなたは紙の上に、

 物体の最も正確で最も美しい画像を現すそれらの自然の色で表現された物体の

  全ての点を見るだろう。


これは暗室で、雨戸に開けた穴に凸レンズを当てることで、完全にうまくいくだろう。

編注)* ボローニャの会社によって立てられた最大のレンズは、100(約30cm)と136フィート(約40.8cm)の焦点の長さを有した。ホイヘンスが2つのレンズ、焦点距離が1つは120フィート(約36cm)、もう一つは123(約37cm)フィート、を王立研究所へ寄贈した。

そのとき、あなたは雨戸の穴の向かいに置かれた1枚の白紙上に

 かなり正確に描画された全ての外部の物体を見るだろう。


あなたは鉛筆でそれらをなぞってみるとよい。


画家は景観やその他の光景を描くためにそのような装置を利用する。*

1760年8月13日

 

編注)*

 前の手紙でオイラーにより適用され且つ説明された光の理論は、ホイヘンスによって1690年の彼の“光についての論考”の中で独自に提示された。

この独創的な論文で、彼は、如何にして全ての屈折と反射の現象が説明され、計算されるのかを

光がエーテルのような媒体の波動から成るという仮説によって示し、そして、かれは、複屈折現象により立証されたと、それを考えた。

この理論を復活させようとするオイラーの試みにもかかわらず、それは全面的に無視され、音響物理の一分野として、ヨーロッパのどこにも受け入れられなかった。

1800年頃、トーマス・ヤング博士が、哲学界に対し、ただ一人で思い切ってそれを支持した。

かれは、いかなる一般的な原理も基準にせず、自然現象の大きな変化を説明するため、その適用可能性を指摘した。

さらに、この干渉の法則の発見により、かれは波動の理論を確立したと言われる。

その後発見される偏向という奇妙な現象と複屈折は、波動の理論によりうまく説明された。

そして、光学のその分野での最近の発見のいくつかは、最も堅固な基礎の上に位置づけることで、熟考されるだろう。

光を発する粒子の放射に関するニュートン学説を、われわれは常に真の学説として考えてきた。

その偉大な発見者の名前に対する偏り、−それが一般的な現象を説明するという簡便さ及びおそらく国民感情の一部、が、この国に永久なるものを与えようと共謀した。

しかしながら、波動の理論が、それが受け入れ且つ説明する現象の大きな変化(多様性)を研究してきた全ての哲学者によってまもなく採用されそうである、ということを、真実の力は敢えてわれわれに認めさせる。

光に関するホイヘンスの理論の説明は、エジンバラ エンサイクロペディア、技術、光学、15巻、524ページに見出される。
 

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