自然哲学の諸問題についてのドイツ王女へのオイラーの手紙

 

光線の反射の結果である反射光学の主要な現象を説明しながら、私は屈折光学を論じ続ける。


その目的は、

 それらがさまざまな透明な媒体を通過するとき起こる光の屈折の現象

  を明らかにすることである。


もし同じ媒体を通って前進し続けないならば、光線は同じ直線をたどるわけではない。


それ(光線)が多少傾いて向かうことにより、
 別の透明な媒体に入るとすぐに、多少その方向を変える。


それ(光線)が直線の進路をたどるのは、
 即ちそれが他の媒体に垂直に入るとき、ただ一つである。

屈折光学において原理的によく考えられた道具は、
 望遠鏡と顕微鏡の構造に使われるガラスである。


これらのガラスは円形をしているが、2つの面を持つ。


それらに関するあらゆる事柄は、
 平面または凸面または凹面であるこれら2つの面の図に縮小できる。


それらの凸面または凹面は常に球体のそれ(表面)に等しく、

 これらの表面の曲面の大きさとして考えられる半径が既知でなければならない。


これがあることにより、さまざまな種類の屈折光学ガラスが存在する。

最初の種類、No.1.(Fig22)は、2面が平面の屈折光学ガラスである。


等しい厚さのガラス板の外の円い部分を切ることにより、

 われわれは、
  大きさまたは距離についても対象物を変えることのない
   この種のガラスを手に入れる。


ガラスNO.2.は表面板の1つが平面であり、他は凸面である。

そしてそのようなガラスは平凸と名付けられる。


第三の種、No.3.は1面が平面で、他が凹面である。

そしてこれらは平凹と呼ばれる。


第四、No.4は2つの凸面を有する。そしてこれは両凸と呼ばれる。


N0.5は2つの凹面をもち、さらに両凹(ダブルコンケイブ)と呼ばれる。


種No.4、5は片面凸で、他面が凹面をもつ。

そしてわれわれは凹凸レンズ(メニスカス)と言う名前を与えている。


全てのこれらのレンズは2つの種類に分類される。


ひとつは、No.2、4、6のように凸が優勢のこれら(レンズ)を含むもの。


もう一つは凹が顕著なもの、即ちNo.3、5、7である。


最初の種類は単純に凸、後のものは凹と命名される。


これらの2つの種類は次の特徴により区別される。

AB(Fig23)を非常に離れた対象物EFに向いている凸レンズとしよう。


その光線GA、GC、GBはレンズに向かい、さらにそれを通過して、

 G点から前進する光線がレンズの反対側のg点で出会う、

  という方法で発生する屈折を受ける。


同じことが物体の各点から進む光線に起きるだろう。


この(光の経路の)変化により、
 物体がe,f,gにあり、しかも逆さまであるかのように、

  全ての屈折光線Al、Bm、Cnは同じ方向へ進むだろう。


そして、それ(ef)は
 距離Cgが距離CGに含まれるほど何倍も小さく見えるだろう。

そのとき、われわれは、
 そのようなレンズはその背後のefに物体EFを表わすという。


そして、この表現は、
結果として逆転され、
 且つ
鏡像からレンズの距離と物体からレンズの距離の比率で、
  
物体自身に伴う鏡像と呼ばれる。

そのとき、もし太陽がその物体であったなら、
 efに現れた鏡像が太陽のそれ(鏡像)であることは明らかである。


たとえそれが非常に小さくとも、それは目がまぶしいほどに非常に輝くだろう。


と言うのは、レンズを通過するあらゆる光線は、
 この鏡像で出会うのであり、
  それらは光と熱を与えるそれらの2倍の力で作用する。


レンズ表面が、焦点と呼ばれる太陽の鏡像の大きさを越えるのと同様に、

 ほぼ何倍もの大きさの熱がある。


つまり、もしレンズが非常に巨大であったなら、あなたは熱の最大の効果を生み出すだろう。


そのようなレンズの焦点に置かれた可燃性の物質は直ちに焼き尽くされる。


金属は溶かされ、さらにそれによりガラス状にさえなる。


そして、他の効果は、遠く離れたところでもっとも活発で強烈な火を生じることだ。

この理由は天日採りレンズの場合と同様である。


両者において、鏡またはレンズの全表面にわたり拡散される太陽光は、
 太陽の鏡像という小さな空間に集光される。


唯一の相違は、鏡では光線は反射により、レンズでは屈折により集光されることである。


そのようなものが、私がNo.2、4、6に示した
 端よりも中心でより厚い凸レンズの効果である。


No.3、5、7で示されるそれら(レンズ)は、中心よりも端でより厚い。


そして、凹面という名の下に理解されるものは全て反対の効果を生み出す。

ACBを(Fig24)この形(凹面)のレンズとしよう。


もしあなたが非常に離れたところで物体
EGFに向いているならば、

 AlCmBnの方向にレンズを置いておくと、

  あたかもそれらがg点から出てきたかのように、

     G点から進む光線GAGCGBは屈折の影響を受けるであろう。


そしてレンズの後ろ、例えばmに置かれた目は、

 あたかもちょうどそれ(物体)がefgに置かれ、

  且つそれ(物体)はG点にあるが、
   距離CGが距離Ggを越えるのと同様に
    何倍も小さいそれ(efg)と同じ状態にあるかのように
     物体が見えるだろう。


そのとき、凸レンズは、それらの背後に非常に離れた物体の鏡像を表わす。


凹レンズはそれら(物体)の前にそれ(鏡像)を表わす。


前者は反転したそれ(鏡像)を表わし、後者は本物の状態を表わす。


2つの鏡像は、

 レンズから物体の距離が鏡像からレンズの距離を越えるのと同様に

  何倍も小さい。


望遠鏡やめがねや顕微鏡の構造はこの特性により発見された。

     1760年8月11日

 

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