自然哲学の諸問題についてのドイツ王女へのオイラーの手紙

 

物体の微小な粒子の急速な振動により生み出される光線が、
 同じ透明な媒体中で運動する限り、

  それらは同じ方向を維持するか、さもなくば、全方向に直線的に自身を拡散する。


これらの光線は、中心から流出しつつ、周辺へ直線で進む円というより
 むしろ球体の半径により示されるだろう。


そして、われわれがそれらを表現するため半径または光線という同じ言葉を使用するのは、

 この類似性によるのである。


けれども、正確に言うなら、光は線でできているのではなく、
 直線方向へ進み続けながら非常に高速で振動することにより成り立つ。


そして、この理由により、光は全方向に発光点から流出する直線として考えられるかもしれない。

C(Fig11)を光線が全方向に流出する発光点としよう。


2つの球体を、
大きな円abcd、他をABCDとし、

共に中心Cの周りに描こう。


そのとき、小さい球体abdeの表面から拡散する光は、

 大きな球体ABDEの表面を同様に占有する。


その上、光は、後者(ABDE)の表面では、
 球体abdeの表面のそれよりぼんやりして、弱くなければならない。


その結果、光の作用は、
 発光点からの距離に比例してより弱くならなければならない、と結論される。


もし我々が、より大きい球体の半径が小さいほうの2倍であると仮定するなら、

 より大きな球体の面は4倍大きいだろう。


それ故に、同じ量の光がより大きな球体およびより小さな球体の表面から発散されるので、
 光は距離が2倍になると、4倍以上ぼんやりとする、ということになるはずである。


3倍の距離では9倍の弱さに、4倍の距離では16倍の弱さになる、等々。


太陽の光にこの規則を適用すると、
 もし地球が太陽から2倍の距離に移されたなら、太陽から来る光は4倍以上弱くなるだろう。


そして、もし太陽がわれわれから100倍も遠かったなら、
 太陽の明るさは100倍のまた100倍弱くなり、即ち、1万倍弱くなる。


さらに、太陽と同様に巨大にして発光もし、
 しかもわれわれから40万倍も遠い恒星を仮定すると、
  即ち、その光は太陽のそれよりも40万倍の40万倍、
   即ち、1600億倍以上弱いのである。


その結果、われわれは、恒星の光が太陽の光と比較できないほど弱いことを知る。

そして、弱い光は大量の光の前では常に消える、これが我々が日中に星を見れない理由である。


ろうそくやわれわれからのそれらの距離に比例して
 より少ない光を与える全ての他の発光体について、同じことが適用できる。


そして、もしあなたがいくらか離れたところへそれを遠ざけたとすれば、

 いかに光が強力であろうとも、
  印刷された本を読む場合、われわれの役に立つには不十分である、

   ということに、あなたは度々気が付くはずだ。

  

さらに加えて、私がちょうど観察したこと、

 即ち、同じ対象物がその距離に比例してわれわれに小さく見えるということに

  密接に関連した別の事情がまだある。


非常に離れると、巨人は我々に近い小人より背が高くは見えない。


これに関する明確な判断を形成するため、

 これらの対象物がわれわれによって見える角度に注意する必要がある。


さらに対象物、例えば人である
AB(Fig12)、
 さらに目が
C点からそれを見る場合を想像してみよう。


その点から、
 対象物から目へ進む光線の端を表わす直線
ACBCを描こう。


われわれは、
C点で作られる角を、その対象物とCの間の視覚と呼ぶ。


もしわれわれがより小さな距離
Dから同じ対象物をみるならば、
 視覚
Dは疑いなくより大きいであろう。


それ故に、同じ物体でも距離が大きくなればなるほど、その視覚はより小さくなる。

そしてそれが近づけば近づくほど、視覚はより大きくなる。

天文学者はわれわれが天体を見る角度を非常に正確に測定する。

そして太陽の視角がやや1度の半分より多いことを、かれらは発見した。
(訳注:今日では0.533°)


もし太陽がわれわれから2倍あったなら、この角は半分に減少する。


さらに、太陽が4倍以下の光をわれわれに与えることには驚くこともないだろう。


そしてもし太陽が400倍も遠いなら、その視角は非常に小さなものとなり、


その結果、発光体は一つの星よりも大きくはないように見えるだろう。


それゆえ、われわれは、
 ある対象物の見かけの大きさとその実際の大きさとを注意深く区別しなければならない。


第一は、対象物が近いかまたはもっと遠いのかにより、
 常により大きいかまたはより小さい角度となるということである。


次に、太陽の外観の大きさは1度の約半分の角であるが、
 その実際の大きさは地球の大きさをはるかに超える。


というのは、球体である太陽、その直径は約790,000イギリスマイル
 
609km/mile×790,000mile=1,271,110km)であり、その一方で、地球の直径は7912イギリスマイル(1.609km×7912=12,730km)であるからだ。


1760年6月29日

 

 

  "Go to Menu "                                        "Next  "