自然哲学の諸問題についてのドイツ王女へのオイラーの手紙

 

中心から発する円や球体の半径のように、
 それら(光線)があらゆる方向に発光点から分岐するので、

  それ(媒体)がエーテルや空気であろうと、また何らかの他の透明な物体であろうと、

   光が同じ媒体内で運動する限り、伝播は光線と呼ばれる直線で進む。


放射の仮説では、発光体から発射された粒子は直線運動する。

音がどの方向からやってくるのかをわれわれが判断することにより、
 ベルの音が直線で伝達されるのと同様に、

  攪拌が直線で伝達されるという提案をする名誉を私が得た事の中には、

   同じことが含まれて居る。

さらに、それらが同じ透明な媒体を通過する限り、
 2つの仮説において光線は直線により表される。


しかし、あるものから別のものへ通過する場合、それらは同じ屈曲を受ける。


そして、この屈曲は、多くの現象を説明するために必要であるこの知識、
 つまり光線の屈折と呼ばれる。


それゆえに、私は、屈折が起こることに従って、この原理を規定する話を続ける。

光線がECFig8)のように、別の媒体の表面AB上に鉛直に降り注ぐとき、
 それは、
CFにように、延長された同じ直線上を進み続ける、

  ということは不変の法則である。


それは、この場合、屈曲または屈折を受けることはない。


そのとき、もし
ECが、水またはガラスの表面ABに垂直に降り注ぐ太陽光線ならば、
 それは同じ方向に入り、さらに表面
ABに垂直である線CFへ進み続けるだろう。
なぜなら
EFは1つの同じ直線であるからだ。


これは屈折のない場合に限られる。


しかし、光線が別の透明な物体の表面に垂直に降り注がない場合には、

 同じ直線でその進行を続けるわけではない。


それ(光線)はそれ(同じ直線)から多少傾き、屈折を受ける。

別の透明な媒体の表面ABに斜めに降り注ぐ光線PC(FIG9)があるとしよう。


この媒体に入ると、それは線
PCが生成する線CQの方向には進行し続けないだろうが、線CRまたはCSの方向に傾くだろう。


そのとき、それは
C点で

 部分的に2つの媒体の相違に、
  また部分的に光線
PCの方向の傾きに依存する、
   我々が屈折と呼ぶ、屈曲を受ける。

この屈曲の法則を理解するため、
 このテーマを取り扱う場合に使われるある言葉を説明する必要がある。

第一に、光線がやってくるところ、
 さらに光線が入るところの2つの媒体を分離する表面
ABは、屈折表面と呼ばれる。


第二に、それに降り注ぐ光線
PCは入射光線と呼ばれる。


第三に、別の媒体内で
CQとは異なった道筋をたどる光線CRまたはCSは、
 変則または屈折光線と呼ばれる。

 さらに、鉛直線ECFを表面ABを通り抜けて引いておき、


第四に、鉛直線
ECとともに入射光線PCにより作られる角PCEを入射角と我々は呼ぶ。


第五に、鉛直線
CFとともに反射光線CRまたはCSで作られる角RCFまたはSCFは屈折角と呼ばれる。

それゆえに、光線が受ける屈曲が原因で、屈折角は入射角PCEと等しくない。


PCQの方へ延長すると、あなたが容易に思い出すとおり、
 垂直である角
PCEFCQはそれぞれ等しい。(ユークリッド幾何学の基本、書?T.特性15)


そのとき、角QCFは入射角PCEに等しい。


ゆえに、反射角RCFまたはSCFは大きいかまたは小さい。


さらに、有り得る場合は2つだけである。


1つは、CRである反射光線の反射角RCFは入射角PCEよりも小さい。


もう一つは、CSである反射光線の反射角は入射角PCEよりも大きい。


前者の場合、光線CRは垂直線CFに近い、とわれわれは言う。


また別の場合、反射光線CSが垂直線から離れ、またはそれる。

そのとき、これらの変化の一方または他方の、いづれの場合が起こるのだろうか?
 と問うことが必要である。


そして、われわれは

 この現象は、2つの媒体の密度の相違によるということを発見するだろう、


なぜなら、光線がそれらの各々を通過するとき多少の違いをもって伝達されるためである。


これを証明するには、エーテルがあらゆる媒体のなかで最も珍しいものであり、

 光線が最小の抵抗も受けることなく伝達されることを思い起こされねばならない。


その後に、一方の普通の透明な媒体がそのように配列される。
 つまり空気、水、ガラスである。


こうしたガラスは水よりも密度の大きい媒体である。


同じく、空気よりも水、エーテルよりも空気である。


これが存在することにより、われわれは以下の2つの一般的な規則に注意しさえすればよい。

第一、 光線が密でない媒体からより密である媒体の中を通過するとき、屈折光線は垂直により近く。

 これは入射光線がPCで、屈折光線がCRの場合である。


第二、光線がより密な媒体から、密でない媒体へ通過するとき、屈折光線は垂直から離れる。

 これは入射光線がPCで、屈折光線がCSの場合である。


この屈曲は、多かれ少なかれ2つの媒体が密度に関して異なることに起因する。

このように、空気からガラスへ通過する光線は、
 空気から水へ通過するときよりも、より大きな屈折を受ける。


その上、2つの場合、屈折光線は垂直に近づく。


同様の法則で、ガラスから空気へ通過する光線は、
 水から空気に通過するときよりもより大きな屈折を受ける。


しかし、これらの場合、屈折光線は垂直から離れる。

最終的には、入射角が大きいほど、

 入射角と屈折角の差は相当に大きくなる、

  または、入射光線が垂直から離れるほど、光線の屈曲または屈折は一層大きくなる、

とさらに言うべきである。


あらゆるこれらの角には相互の関係が存在し、さらに幾何学により決定できる。


しかし、今詳細に入る必要はない。


既に述べてきたことは、
 私がこのテーマをさらに提案しなければならないことを理解するのに十分である。

1760年6月22日

 

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