自然哲学の諸問題についてのドイツ王女へのオイラーの手紙

 

私は、いかにして不透明な物体の照明がその最も微小な粒子内で、
 その同じ不透明な物体を可視化する光線を励起するのに適切な攪拌を生じなければならないのか、
  を示すことを引き受けた。

少ないか多いかの関係の違いである音と光の間の類似、つまり、
 音が空気と相対的に関連があるのと同様に、光は相対的にエーテルに関係していること、
  −この類似は、まあ、私の契約を果たすことを可能にするだろう。

発光する物体は、実際に振動の状態で楽器と比較されねばならない。

それは、これが本質的な力なのか、それとも無関係な力の効果であるのかどうか
 というあまり重要でない問題である。

音が放射されることは私の目的に対し十分である。
不透明な物体は、照らされないかぎり、
 使用中でない楽器、
  または、もしあなたが望むなら、それらが弾かれるまで音を放射しない弦と
   比較されねばならない。

光から音へ移されることにより、
 この問題は、静止状態の楽器の弦を、
  振動状態にある楽器の音の活動範囲内に持ってきたとき、
   ある環境でなんらかの攪拌を受けること、
    さらに触れられることなく音を放射することは、
     可能であるのかどうか?
という問いの中で解決される。
(訳注:同一の2つの弦を並べ、一方を振動させると他方が共振して振動を始める現象が起きるのか?という問いである。今日では、音波が弾性振動であることから明らか。)

今や、これは日々の経験により確認される。
もしあなたが、コンサートの間、
 適切に調音された個々の弦に注意を払うという労を惜しまないならば、
  あなたは、弦がときどき触れられずに震え、
   さらに、あたかもそれが直ちに振動状態になっているかのように、
    弦が同じ音を出すということに気づくだろう。

もし楽器がその弦で同じ音を弾けば、この実験はさらにうまくいくだろう。


演奏されていないハープシコードの弦を注意深く考えると、
 例えば、バイオリンが音aを弾く間に、
  同じ音の弦が目立って震え出し、
   さらに触れられずに音さえも出すハープシコードにあなたは気づくだろう。

1オクターブ、5度および3度さえ離れた音の
 各弦に完全に調音してある楽器が準備されたなら、
  ある他の弦は同様に攪拌されるだろう。


この現象は音楽家に良く知られている。

そして、最も著名なフランスの作曲家のひとりラモーはその上に和声の原理を確立した。

かれは、オクターブ5度と3度がコンソナンス(協和音)として考慮しなければならないこと
 を支持した。

なぜなら、1つの弦は、ユニゾン(同音)内か、
 最初から1オクターブ、5度または3度である、
  別の弦の音によってのみ攪拌されるからだ。

しかし、和声の原理は、
 音がお互いに持つ関係の単純さにより非常にうまく確立されており、
  即ち、それらは新しい確認を必要としない、
   ということが認められねばならない。

事実、ラモーにより観察された現象は和声の原理からくる非常に自然な結果である。

これをもっと解りやすくするために、
 ユニゾン(同音)まで巻き上げた2つの弦に注意してみよう。

一方が弾かれると、他方も自身で震え始め、さらに音をだすだろう。

その理由は十分に明らかである。

つまり、弦がそれ自身と同じ振動運動をその震えにより空気に伝えるので、
 この振動運動により攪拌された空気は

張力の程度によりこの運動に影響されやすくなった弦を
 相互に振動させるにちがいない。

振動状態の空気は、あらゆる反響で非常に弱く弦を弾き、
 さらに、まもなく打弦の繰り返しが目立った運動を弦に起こす。

なぜなら、その張力に合わされた振動は空気のそれらと一致する。

もし空気中の振動数が半分、または3度または関係が十分に単純である他の数であれば、
 弦は、先の場合同様に、
  最初の場合より少ないが震える運動を増やし続ける2度、3度、4度ばかりでなく、
   全ての振動で新たな刺激を受けない。


しかし、もし空気の振動が弦に一致する振動と何らかの簡単な関係をもたないならば、
 その流体の攪拌はそれに対し何の影響も生じないだろう。

もし弦の振動が、流体の振動と少しも一致しないならば、
 次に続く空気の刺激は、弦の振動が発生したほとんどの作用を無効にする。

そしてこれは実験により完全に確認されている。

このようにして、弦が音により揺り動かされるとき、
 その音は、知覚可能であるためには、正確に弦の振動と同じでなければならない。

弦の振動に調和(コンソナンス)する他の音は、
 事実、似てはいても知覚できてもその作用が小さいものを生み出すだろう。

そしてディソナンス(不協和音)は何も生み出さない。

この現象は楽器の弦ばかりでなく、良く鳴り響くものなら何にでも起こる。

あるベルは、それとユニゾン(同音)か1オクターブか5度か3度離れた
 別のベルの音のみにより反響する。


声によりガラスを破壊することができる人の例は、
 私が前に言ったことをより一層堅固にする。

コップが彼に与えられたとき、声をぶつけることによって、かれはその音を発見した。

そのとき、かれがユニゾン(同音)の嵐を開始すると、コップは直ちに振動を捕らえた。

彼が可能な全ての力を彼の声に与え続け、ユニゾン(同音)を常に維持することで、
 コップの振動はすぐに非常に激しいものとなり、結果それを破壊した。

弦やあらゆる他の良く響く物体が
 類似の音により振動状態になることは実験により確認されている。

同じ現象が、
 微小な粒子が照明によってのみ攪拌状態になる可能性のある
  不透明な物体について起こるに違いない。
   −それは私が解決を企てた問題である。


次の手紙はそれについてより豊かな議論を含むだろう。


1760年6月8日

 

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