自然哲学の諸問題についてのドイツ王女へのオイラーの手紙

 

エーテル内での光の伝播は、空気内の音の伝播に似た法則を生み出す。


また、空気の粒子を原因とする振動が正に音を構成するように、
 同様の法則で、エーテルの粒子の振動が光や輝く光線を構成する。


それゆえに、光はエーテルの粒子の攪拌や振動に他ならない。


それは非常に薄く広がっており、全ての物体を貫通するのでどこでも発見される。

しかしながら、これらの物体は、
 振動の伝播を送出したり停止したりすることにより、多くの異なった方法で光線を変化する。


わたしは、これに関しては次の手紙で取り扱うつもりだ。


私は、天体が回転する広大な空間を満たすエーテル自身の中での光の伝播については、
 目下控えておく。


そこでは伝播は全く自由に発生する。


最初に思い浮かぶことは、
 後者(音)は1秒間に1100フィート(
0.3048m/フィート×1100フィート=335.28m)も進むが、
  それ(光)は音の速度よりおよそ900,000倍であるという桁外れの光線の速度である。


この驚くべき速度は放射の仮説を覆すのに十分であろう。


しかし、私が確立しようとしているのは、
 私が証明しようと望む、そこに存在する原理からの自然な帰結である。


それらは、空気中の音の伝播を見出されるこれらと同じである。

そして、これは同時にその密度と弾力性に依存する。


もし空気の密度が減少したなら、音は加速される、ということが証拠である。

さらにもし、空気の弾力が増加したなら、同じことが起こるだろう。


もし、空気の密度が減少し、同時にその弾力が増加したら、
 われわれは音速が2倍に増加する理由を得るだろう。


密度と弾力がエーテルのそれらと等しくなるまで、
 空気の密度が減少し、且つ弾力が増加したと考えてみよう。
そして、われわれはもはや、音速が実際の速度より数千倍になっても、驚きもしないはずだ。


というのは、われわれがエーテルを考えだした最初の考えに従うと、
 この流体は想像以上に空気よりも希薄で弾力的であるにちがいない、
  ということをあなたは喜んで思い出すだろうから。

今や、これらの性質は共に振動の速度を加速するのに貢献している。


この説明から、桁外れの光速は矛盾した結果をもたらすようななにかの原因とは関係なく、
 つまり、それはむしろそこに存在する原理と完全に調和するのである。


そして、光と音の間の類似性はこの点で非常にしっかりと確立され、

 もし空気がエーテルのように薄く広がり、且つ弾力的であるはずなら、

  音の速度は光の速度と同じ速さになるだろう、

   ということを、われわれは自信を持って支持しても良い。


エーテルの薄く広がる性質と大きな弾力性は、
 われわれが桁外れの光の運動速度とみなす原因である。


さらに、エーテルが薄く広がる度合いと弾力の度合いを維持する限り、
 この速度は同じく維持されるにちがいない。


今や、エーテルが、全宇宙の中で同じ薄く広がる性質と同じ弾力性を有することは疑い得ない。

というのは、エーテルが、
 ある場所の方が別の場所よりも少なかったなら、
  平衡が完全に元に戻るまで、それ(多い方)はその中(少ない方)へ押し出されるだろう。


それ故に、星の光は太陽の光のそれ(速度)と同様に巨大な速度で移動する。


そして、星はわれわれから太陽よりも莫大な距離にあるので、
 莫大な量の時間がわれわれへとそれらの光線を送出するために必要である。


いかに太陽への距離が非常に遠いように見えても、
 その光線は8分でわれわれの地球の表面へ到達してしまう。


われわれに最も近い恒星は、太陽より少なくとも400,000倍の距離にある。


その星から発せられる光線は
 われわれまで進むのに8分の400,000倍の時間、
  即ち、約53,333時間または2,222日または約6年を費やすだろう。


光線が、われわれの眼にみえるためには、
 最小の距離で且つおそらくもっとも光り輝くあの恒星から発せられてから
  6年余りかかるのである。


さらに、これらの光線は、
 あの星とわれわれを分断する空間を飛んでくるのに
  非常に多くの時間を費やしてきたのである。

正にいま、神が同じ距離に新たな恒星を作ろうとしているなら、
 その光線がこの距離を旅するためには長い時間を必要とするので、
  6年以上経つまで見ることはできないだろう。


神が、私が言及した星の千倍も遠い距離に世界の始まりを創造したのなら、
 創造から6000年が経過しなければ、
  いかに輝こうとも、それはまだわれわれには見えないだろう。


ブランスウィックの裁判所の最初の伝道者エルサレム氏は、
 幸いにも彼の説教の一つにこの思想を紹介した。


その一説はかくのごとく語る。


“あなたが住む地球から、
  あなたの頭上のかなたにある広大な宇宙の全ての物体へ、あなたの思考を引き上げよ。

   あなたの目が見出せる最も遠いところと、創造の瞬間から現在まで、
    光もまだおそらくはわれわれに届いていないそれらの場所の間にある
     広大な宇宙へ乗り出そう。

      広大な神の国がこの説明の正当性を示すのである。“

(天国における説教と永遠の至福)

私は心の中で、
 これらの考えは、色と視覚の理論に由来する光の仮説に関する
  さらなる知識への欲求をかき立てるであろう、
と信じる。

1760年6月17日

 

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