自然哲学の諸問題についてのドイツ王女へのオイラーの手紙

 

既に言及した特徴に加えて、
 空気は、固体等を除く全物体に共通するもう一つの驚くべき特徴を持つ。

 


つまり、加熱と冷却によりそれに生じる変化である。

 

一般的に、加熱される全物体はその大きさが膨張するか増大することが観察される。

非常に熱せられた鉄の棒は、それが冷えているときよりもいくらか伸びて薄くなる。

 

使用場所で受ける長さや欠乏のわずかな差異を
 正確に表示する
パイロメーター(高温計)と呼ばれる計器がある。

 

歯車はかなりの速度で回転する他の歯車へ動きを伝達するにもかかわらず、
 時計の中でいくつかの歯車が非常にゆっくり動くことをあなたは知っている。

 

ほぼ知覚不可能な変化からかなりの変化を生み出すまで、
 わたしがちょうど話したばかりのパイロメーター(高温計)の場合のように、
  同じ機構によりそれは可能である。

 

それは実験が行われる物体の長さに生じたわずかな変化を相当の空間に送り出すしるしである。

 

燃焼するランプの上に置かれた鉄の棒または何らかの他の金属の棒にこの計器を適用すると、
 目盛りが直ちに動き出し、棒が長くなることを示す。

 

さらに熱が増加するので、棒もまた長さが増加する。

しかし、ランプを消すと伸びている棒は再び冷え、
 目盛りは反対の方向へ動き、それによって伸びている棒はさらに短くなる。

 

しかしながら、この差異はあまりにほんのわずかなので、
 この計器の助け無しには、それに気付くことは困難かもしれない。

 

その上、この変化は振り子時計の運動で十分に気づくことができる。

振り子の用途は運動を調整することにある。

もしあなたがそれを長くするならば時計は遅れ、また、もし短くするならば時計は早くなる。

 

さて、非常に暑い天気では、全ての時計は時間が遅れ、
 非常に寒い天気では比例して時間が進むと言われる。

 


即ち、大気の温度に従い、振り子は長くなったり短くなったりすることがはっきり証明されるのだ。

 

全ての物体はこの変化の影響下にある。

しかし、それらが作られている物質の性質により、その量は大いに異なる。

 

特に液体では、この可変性は現実に知覚可能である。

 


それを確かめるために、ガラス管
BCを取り(Fig6)、
 中空のボール
ABの端をくっつけ、あなたが好みの何かの酒でMまで満たそう。

 

ボールAを暖めると、酒はMからCに向かって上昇するだろう。

 


再び冷たくなると、酒は
Bへ向かう。

 

これは、同じ酒はそれが温められるとより大きな空間を、
 また冷やされるとより小さい空間を占める、
  ということを明らかに証明している。

 

ボールが巨大で、且つ管が狭いとき、
 この変化がさらに知覚可能であることは明らかである。

 

というのは、もし酒の全質量が1000分の1だけ増加するか、または減少すると、
 1000分の1が管内でその狭さに比例した大きさの空間を占める。

 

そのとき、そのような器具は、加熱と冷却の量の差異をわれわれに示すのに非常に最適である。

 


つまり、もし、酒が上昇しているか下降しているならば、
 熱は増加しているか減少しているということが一定の表示度数となる。

 

この計器は、われわれを取り囲む空気や物質の温度に生じる変化を指示する
 サーモメーター(温度計)と呼ばれている。

 


それは、用途が
 空気が圧縮される力というよりは空気の重さを示すためにある
  バロメーター(大気圧計)と混同してはならない。

 


この注意は更に必要である。

 


即ち、バロメーター(大気圧計)とサーモメーター(温度計)はかなり類似している。

 


というのは、2つのガラス管が水銀で満たされているからだ。

 

しかし、それらの構造やそれらが発見された原理は全く異なる。

 


加熱による膨張と冷却による収縮という物体のこの量は、まさに上方の空気と同類である。

 


わたしは次の手紙でよりいっそう詳細にそれを説明するつもりだ。

 

              1760年5月27日

 

編注)* この計器については、今日実用になっているものは3種類ある。ファーレンハイト、レオミュール、セルシウスの各温度計。これらの内、最初のものはイギリスと北アメリカで使用され、氷点は32°、沸点は212°、中間点が180°である。スイス、イタリア、ドイツの一部で使われるレオミュールでは、目盛は氷点から始まり、沸点は80°に置かれ、間隔が80°である。フランス、スウェーデン、デンマークで使われる100分度目盛の温度計では、氷点が0°、沸点が100°である。

 水銀を含む管が、最近まで大気圧力中に管を露出している水銀の上にできる真空の結果として起こると思われてきたその形を変えたとき以外は、温度計の氷点は動かせない。

しかしながら、沸点は大気圧によって変化する。

地球表面近くでは、海抜530フィート毎に、またはバロメータ(大気圧計)0.589インチ毎に、ファーレンハイト度で1℃変化する。

それゆえに、水が沸騰する温度を測定することにより、われわれはその場所の高さを決定できるだろう。

この方法は最初、ファーレンハイトとカバロによって示唆されたが、1817年に哲学会報でこの温度測定向けのバロメータ(大気圧計)の根拠を与えたウォルストンによって完成された。

 

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