自然哲学の諸問題についてのドイツ王女へのオイラーの手紙

 

空気が流体であり、伸縮性があり、重力を有することを証明してきたので、
 わたしは、地球がこの流体によって全面を囲まれていること、
  そしてそれが満たす空間が大気と呼ばれることについて述べ続ける。

完全な真空は、地球表面の如何なる場所において存在することも、全く不可能であろう。

というのは、上方の空気の重さにより圧縮され、
 絶え間なく広げられる隣接する領域の空気は、
  空気自身を強制的に空の空間に追いやり、それを満たすだろう。

それ故に、大気は地球を取り巻く全領域を占めるのである。

下方の空気は上方の空気の重さにより絶えず押されており、
 つまり、この圧力の結果生じる伸縮度が、
  圧縮力との均衡を生じることができるまで。

そのとき、この空気は下の方向に押されるのみであるが、
 空気はその伸縮性のおかげで、押し出され、
  自身を下の方ばかりでなく、横方向にも拡張しようとする。

この理由のため、部屋の空気は、
 ある哲学者にパラドックスのように見えた
  外部の空気と同様に大いに圧縮される。

つまり、かれらはこのように結論づけた。

部屋に中では、下方の空気がその部屋に含まれる上方の少量の空気によってのみ圧縮される。


それに反して、外部の空気は膨大な高さの全大気の重さにより圧縮される。

しかし、空気が全方向に圧縮されるとき、
 空気が自身を拡張することで(ある空間を)占有するという特徴により、
  論争はすぐにかたずけられた。

ここで、部屋の中の空気は、
 最初に外の空気によりそれ自身と共に
  圧縮力と伸縮性を同程度に減らされる。


ゆえに、わたしが部屋の中に居ようと、外の空気の中に居ようと、わたしは同じ圧縮力を感じる。


普通に理解するならば、つまり、地球の中心から同じ高さ、または同じ距離でということである。

というのは、高い塔またはそびえ立つ山の頂上にいる場合は、
 空気の圧縮力はわずかであり、故に上方の空気の重さはさらに少ない、
  とわたしは既に述べた。


さまざまな現象によりこの空気の圧縮状態が確認できる。


例えば、(Fig.5)管ABを取り、Aの端をふさいで、水か他の液体で管を満たし、
 
Bの開いている端が最も低くなるよう逆にすると、
  あなたは液体が外へ逃げ出さないことを知るだろう。

液体に対抗してBで作用する空気の伸縮性は、管の中の液体を支持する。

しかし、もしあなたが管のAに穴を開けたなら、液体は直ちに落ちてしまう。

穴により中に入ることを許された空気はそのとき上から作用し、
 水の上からのその圧力により、水は下へと強制的に押し出される。

つまり、管が上部で閉じられている間、
 管の中で水を支えたのは外部の空気であった、ということが証明されるのである。

そのような管が空気ポンプにより空気が抜き取られた容器内に置かれると、
 液体はすぐに降下するだろう。

空気のこの特徴を知らなかった古代文明人は、
 それが真空への恐怖から、その性質が管内の水を支えたのだ、と主張した。

つまり、液体が降下したとすれば、
 空気がその中への侵入を発見できなかったためで、
  それで管の上端に真空があるに違いない、と
彼らは言った。

故に彼らによると、それは管の中で液体を浮かせ続けた真空への恐怖であった。


今や管内の液体の重量を支持するのは空気の力であることが証明された。

そして、この力は一定の量を有するので、この作用は一定の限界を超えることはできない。

それは、もし管ABが33フィート(33feet×0.305/foot=10.05m)以上の長さであるならば、
 水はもはやその内部に吊るされたままではいないだろうが、
  水は33フィートの高さになると流れ出る、という実験により発見される。

上部に残された空間は、当然、真の真空であろう。

そのとき、空気の力は33フィート(10.05m)の高さ以上では管内の水を支持できない。

そして、同じ力が全大気を支持するので、
 大気柱が33フィートの高さの水柱と等しい底面、等しい質量を持つと結論される。

もし水の代わりに、あなたが14倍の重さの水銀を使用したなら、
 空気の力は管内で28インチ(
2.54cm/inch×28inch=71.12cm)の高さを
  支持することが可能である。

そして、もしあなたがそれを超えようとすると、
 管の上部に真空の空間を残して、
  その高さが大気の圧力に一致するまで水銀は降下する。


大気は、常に重力と同等ではないということが発見されてきたことにより、

そのような管は上部を閉じて、
 水銀で満たされた下部を開くと、大気圧計と呼ばれる計器となる。

水銀が上昇または降下するので、
 空気の密度または大気の圧力が増加または減少していることを示す水銀の高さから
  大気圧計により、真の重力が確認された。

1760年5月20日

 

 

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