Reduce Garbage/生ゴミは減らせるか?(1/3) 
ver1.3(2018.07.22)
ver1.3a(2018.08.03) 実験4修正


1.概  要

 家庭ごみは調理(厨房)を中心にした生ごみが最も多く、中でもそのほとんどが水分とされます。その指標となるのが表4-6です。これによると、住宅・マンションの標準廃棄物排出量から排出されるゴミに含まれる水分は40〜65%と高いことが分かります。

 (小型焼却炉−選定と維持管理より)

ここで、そのゴミの内容は右端の廃棄物の分類と性状(表4-5)によります。

 (小型焼却炉−選定と維持管理より)

 表4-6の”混合雑芥”とは一般雑芥+厨芥(ちゅうかい)で、燃やすことが可能なほとんどのゴミです。また”厨芥”とは厨房(台所)から出る動植物性の食品ゴミと考えてよいでしょう。
 

 表4-5によると厨芥の水分は60〜75%と非常に高くなっています。よって各地にあるゴミ処理場では、その使用燃料の多くが水分を含んだゴミの加熱+水の蒸発(気化熱)に費やされていることになります。(ゴミ本体は熱分解による。)

 また近年では、高齢者の介護で使用されるオムツが家庭ごみに加わります。
要介護等認定者数は、厚生労働省「介護保険事業状況報告(年報)」(平成27年度)によると

  65歳以上75歳未満 75,6万人    3.3万人(要介護者4.3%)
 75歳以上     531,3万人  172.7万人(要介護者32.5%)


となっており、要介護者の合計は 176万人 となります。これは今後さらに増えて行くことが分かっています。

一方、新生児は2017年で約94万人(約3万人減)でした。よってH18年(2018)現在、オムツを必要とする高齢者人口は最低でもその約2倍いると見られます。子供のオムツは数年で必要なくなりますが、高齢者は長寿命化の傾向があり、成人用オムツは5年10年と使用され続けます。


また重量も、福岡都市圏紙おむつリサイクルシステム検討委員会報告書(平成28年2月)によると、
 乳児用 35g→130g(95g)
に対し、
大人用 50g→210g(160g)
と水分量が1.7倍も多くなっています。(大人の1回の尿の量はコップ一杯程度。150〜250cc)


H27の環境省による一般廃棄物処理事業実態調査の結果から、

全国の年間ごみ総排出量 4,398万トン(東京ドーム 約118杯分)

となっています。これは大変な量ですが、環境省はH24基準4523万トンからみると激減していると評価しています。しかし実際のところ、オムツの需要が驚異的に増加している(いく)ことを踏まえると、前年比1%弱の減少ですから、激減とまではいえないでしょう。これはさまざまな努力の結果の数値が相殺された結果とみるべきです。

 

 この背景には、高度経済成長期から増え続けてきたゴミの対策をすべく、環境省が推進してきた“3R運動”(毎年10月が推進月間)が功を奏してきたものと考えられます。3Rとは
 
 リデュース(Reduce:減量)、リユース(Reuse:再利用)、リサイクル(Recycle:再生・循環)

を意味します。3Rの前身、ゴミ減量化国民推進会議の活動が1995年といいますから、既に23年続いていることになります。

もっともゴミ処理は処理場で燃焼したからといって全て消失するのではなく、必ず焼却灰が残ります。また集積ゴミからは汚水が浸出し、これには危険な重金属などが含まれるのでその処理も必要になります。


更に90%を超える下水道施設の完成により、下水道処理施設から出る残渣が年々増加しています。処分場の処理能力も大きく改善されてきておりますが、それらは最終処分場へ運ばれます。ところが国内全てのその限界年数がすでに10年以下となっています。よって新たに建設すればよいのですが、その場合、必ずその地域の住民との間に軋轢が生じ、反対運動に至ります。このように施設の増設は現状では大変厳しく、したがって、目下の国民の急務はゴミを減らすことであることに変わりはありません。

こうした事態に対応すべく、各自治体では家庭ゴミの分別と水分を切ることを強く勧めております。(どこの自治体のゴミ関連のHPをみても分かりやすく図解されております。)

一方、一般廃棄物処理事業実態調査の結果の“図−3 全国のごみ処理のフロー“をみると、左下に”自家処理量“という枠があります。H26は4万トンでしたが、H27は2万トンと半分に減少しています。


自家処理量とは、家庭系の一般ゴミで自家肥料、飼料もしくは直接農家に処分してもらうか、自ら処分しているものの総量を指します。(PDF資料:日本の廃棄物に関する基本用語)

 

 一般家庭での堆肥化は、少なからぬ人々が一度は試してみるのですが、その臭いや失敗のせいで断念する者が多く、農家に任せることもほとんどありません。また成功してもできた量が多すぎて、山中の農村地帯ででもない限り、結局は処分することになります。

では自宅での焼却は可能でしょうか? 密集した市街地でのゴミ焼却は、風の状況により煙と煤塵をまき散らす結果、近所迷惑となり不可能です。空き地や河川敷でもバーベキューがよく行われますが、ついでにゴミ焚きでもすれば、不完全燃焼の結果、大量の煙が上がり、静かに鐘を鳴らして消防車とパトカーがやってきます。これは化学工学における燃焼とは何か?という基本原理と重要な熱分解に関する無知がもたらすものです。

こうした環境に加え、小型焼却炉に関する法規制も原因して、自家処理量が4万トン→2万トンと減少傾向にあるのではないかと考えられます。(10万円以下の市販の小型焼却炉は数年で酸化による劣化・分解のために使用できなくなるので継続使用を断念する場合も多いと思われます。よって小型焼却炉の普及率も把握されていません。)

いづれにしても、この量はゴミ全体の量4398万トンからみれば、わずかに0.1%以下です。
先に触れたように生ごみの水分は最大75%もありますので、もし5340万世帯の各家庭でゴミの水分量を減らすことができれば、その方がよほど有効でしょう。

例えば、5340万世帯で1日50gの水分を切るだけでも、

 5340万*(0.05*10^-3)*365=97.5万トン

2.2%ものゴミ減量(年間)となり、さらに自家処理量は飛躍的に増大します。


環境省、“一般廃棄物の排出及び処理状況等(平成27年度)について“ を見ると、H27、ゴミ処理事業の経費は 1兆9495億円となっています。(2兆円を超えれば、おおよそ地方の2つの県の年度予算となる)
単純計算ですが、2.2%の減量なら429億円もの費用が他の予算に流用できることになります。
(この金額は、偶然ですが、H29年度予算 一般会計歳出、社会保障費、“在宅医療・介護連携、認知症施策の推進など地域支援事業の充実  429億円” と全く同じです。)

 



 

H30には完了予定。(長野市、A焼却施設)



 

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