Fluid Mechanics/オイラーとコーヒーカップの渦

水の自由表面の式2

2.オイラーの方程式で調べよう

 2.1.もう一度観察ランキンの組み合わせ渦の登場

それではカップの水の状態から見ていきます。

静止状態では、重力の他に外部からは大気圧のみが加わっており一様であるとします。

回転運動はカップの底の回転翼により強制的に発生し、中心からある距離まで増加、それを超えて縁に近ずくと減少するように見えます。

これはどのように考えればよいでしょうか。

流体が角速度ωで剛体回転している状態を強制渦と呼び、渦ありの流れで循環があります。一方、水はカップの縁に近づくほど抵抗を受け、周速度が遅くなります。この状態を自由渦と呼びます。

よって、水の自由表面はある半径を境にして、強制渦を記述する方程式と自由渦を記述する方程式の2つから成り立つことがわかります。そうです、これがランキンの組み合わせ渦なのです。

尚、水の状態は、基本的には理想流体として取り扱います。

 

 

 

 

 2.一般式を求めよう  

 よってオイラーの運動方程式は、

        

 が適用されます。ここで、単位質量への圧力p,流体の速度u,v,wは

  p=p(x,y,z、t)

   u=u(x,y,z、t)、v=v(x,y,z、t)、w=w(x,y,z、t)

 x,y,z方向にかかる外力をFx,Fy,Fz

と定義します。(ρは密度)

 pは既に述べたとおり大気圧で一定と考え、p=const.

外力はz軸方向の重力のみですから、Fx=Fy=0、Fz=−gz

 速度分布を u=−ω・y、v=ω・x、w=0 で与えると

   

   

となり、オイラーの運動方程式⑩に代入すると

  

を得ます。この式から、

       

が導出されます。

確認のため、⑪式をx、y、z、で各々偏微分することをお勧めします。

 

 

 

2.3.微分方程式を解こう  

 ここで圧力pは大気圧で水の自由平面に対し一定、水の密度ρ=一定から 

ρ/p=c1(定数)とおくと、

     

を得ます。

  ところで、ここで中心からの距離をrとすると

+y=r

ですので、積分定数c2=0として⑫式に代入すると、

  

となり、力学的解析から得た一般式④がここで出てきます。

 

 

 

2.4.ランキンの組み合わせ渦の条件から  

 境界のx方向の値をk、回転速度を中心からの関数とし

x≦kの場合、v=ω・x    (強制渦を記述する方程式の速度条件)

x>kの場合、v=ω・k/x  (自由渦を記述する方程式の速度条件)

と定義します。

(1)x≦kの場合、

 xとzのみの関係に着目し、初期条件x=k、z=0とすると

   

が導出されます。ここで1分間の回転数をNとして

   

を代入すると、

          

を得ます。

 ここで、x、yを含んだ本来の式も導出してみてください。(簡単です)

 

(2)x>kの場合

u=ωk/x、v=ωk/y、w=0、Fx=fy=0、Fz=−gとおくと、

連続の方程式①は

    

となります。

 ここで、各々が関数p(x、y、z)についての偏微分の結果と見れば、

    

が導出できます。

ここで腕試し。x、y、zで偏微分することをお勧めします。

直前の式が求まります。

 

更に、圧力pは大気圧で水の自由表面に対し一定と仮定して、p/ρ=c1とおくと(ρ:密度一定)

    

が得られ、簡略化のためzとxのみの関係式に着目すると、初期条件x=kでz=0であるから

    

よって

               ⑭

が導出されます。

 ここで、x、yを含んだ本来の式も導出してみてください。(簡単です)

 

 ようやくひと安心できます。

 

 

 

2.5.計算しやすい式にしよう

 水の自由表面の式1(第一回転目)でも指摘したように、式⑭に1分間の回転数をNとして

   

を代入すると

       (k:回転半径)             

が得られ、再び現実的な数値を入れて計算できる式になりました。

 

 

2.6.グラフを作成しよう

 図2.6に回転数200〜500[min-1]までの⑮のグラフとデータを示します。

 図2.7の各回転数における自由表面を表わす曲線上で、⑮のkの値に相当する部分(境界値)を決めます。300回転では20mm、400回転では18mm、500回転では16mmの辺りで良いでしょう。

 

           図2.6

 

 

2..写真を撮ろう

 RMF・ステラーで回転数を設定し、回転数300,400,500[min-1]時の写真を撮ります。図2.7に示します。水の高さや幅などの寸法もメモしておきましょう。

 図2.6でk値を決めるための重要な資料となります。

 

 

               図2.7

 

 

 

2..グラフと写真の寸法をあわせる

 図2.8は、グラフ(図2.6)と回転する水(図2.7)を原寸(1cm単位)にあわせて重ね合わせたものです。

 製作にあたり、フリーソフト[普通のものさし Version 1.5.2]を使用させていただきました。

 

              図2.8

 

 

 

2.評価

 自由表面を記述する曲線は半径kで方程式⑬⑭の2つに分かれますが、この値をうまく見つけることにより、実際の水面(自由表面)と重ね合わせた方程式が良く合っている様子が確認できます。(実際はこの曲線をz軸を中心にして回転した三次元曲面となります。やはり三次元で表現できれば更に面白いと思います・・・)

 かくして、完全ではありませんが、身近に起きる現象の1つを微分方程式によって記述することができました。

 

 お疲れ様でした!

 

 しかし、実は喜んでばかりもいられないのです。

 実際の流体の運動は、今回仮定した理想流体とは異なります。

 回転中、渦は常に一定というわけではなく、うねりを生じ、自由表面は必ずしも対称な形を示しているわけではないことに気が付いたでしょうか?簡単な現象でもさまざまな条件により状態が微妙に変化しているというわけです。

 

 さらに、理想流体の条件に”渦有り”、”粘性あり”の条件を加えていくと、オイラーの方程式ナビエ・ストークスの方程式に変わり、数値解析によりコンピュータを利用して解を求めていくことになります。

 分野で数理〜と命名されている分野がそれに相当します。

 そういえば、確かアメリカのある研究所でナビエ・ストークスの方程式の解に100万ドルの懸賞金を賭けていたと思います。

 たった2つの条件が入ることにより超難解な方程式となってしまうナビエ・ストークスの方程式!

        どうぞ意欲のある方は挑戦してみてください!

 

 一方、アインシュタインの一般相対性理論において示された宇宙方程式の解(特異点)の1つがブラックホールを意味していたことは、現在では当然のように受け取られていますが、なんと第一次大戦中に従軍していたシュバルツシルドが砲弾の飛び交う中、時間を惜しんで計算した結果わかったことでした。現在ではコンピュータによるシミュレーションによりその三次元図形がさまざまな本に紹介されています。そしてその形状は、外見上は、小さなものは今回のコーヒーカップの渦、大きなものは鳴門海峡の渦とほとんど同じ形をしており、宇宙の渦といっても良いかもしれません。ただし光が外へ出ることができないので直接は見えませんし、物質は構成する最小単位にまで破壊されてしまいますが・・・。

 

 さてそれはともかく、今回は流体力学における特別な場合の解析でしたが、大変重要な手法を提供してくれるものです。

 

 天才オイラーの偉大さを実感していただけましたでしょうか?

 

 最後までお付き合いいただきありがとうございました。  

                           

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