自然哲学の諸問題についてのドイツ王女へのオイラーの手紙

 

天体の引力の力は地球の質量にばかりでなく、それが構成される全ての部分に及ぶ。


そのため、われわれが地球表面上で見るあらゆる物体は、

 それらの引力(gravity:重力)や特に個々の重さのせいで
  地球そのものへと引かれているだけでなく、

   太陽へ、また全ての他の天体へも同様に引かれている。


そして多かれ少なかれ、これらの物体の質量とそれらの距離に従っているのである。


いまや、地球へ引きつけられる石という物体に伴う力は、

 それらの大きな距離のために、同じ物体が太陽や他の惑星や月へ引きつけられる力よりも

  比類のない大きさであるに違いない、

   ということは明らかである。


この地球の半径に等しい地球の中心からの距離にある物体は、
 月からの(距離の)60倍である。(*1)


たとえ月の質量が地球のそれに等しかったとしても、
 月への引力は、地球への引力または物体の引力(
gravity:重力)よりも60の60倍、
  つまり3600倍小さいだろう。


しかし、月の質量は地球のそれよりも約70倍小さい。(*2)

故に月の引力の力はさらに物体の引力(
gravity:重力)より
 70の3600倍、つまり252,000倍小さくなる。


その上、太陽は地球より数千倍大きいけれども、

 太陽は地球の中心からわれわれの距離(地球半径)の約24,000倍ある。


そして、この理由から、石への太陽の引力(
attraction
 その(地球の)引力(
gravity:重力)に比べて非常に小さいといえる。


ゆえに、あなたは、
 それらが地球へ引きつけられる力の他には何もない地上の物体の引力(
gravity:重力)が、
  天体の引力(
attractionにより気が付くほどの影響を受けることはありえない
   ということを知る。


しかしながら、この引力(
attractionは非常に弱いけれども、


長い間、哲学者を悩ませた驚くべき現象の原因である。


つまり、潮汐または海の干満のことである。


それは一般的な会話の中でさえかなり頻繁に生じ、

 それを理解することはほぼ必然的なことである。


この理由で、わたしはこの特異な現象をより細かく説明し、
 またそれを生み出す原因を説明しようではないか。


では、わたしは海の干満という良く知られた現象の説明を始める。


わが地球の表面のほとんどの部分は、

 海または大洋と呼ばれる水という物質で、覆われていることを

  ほとんど誰もが知っている。


この莫大な流体の質量は、1年のさまざまな季節によって、
 あるときは少量の、またあるときは多量の水を含む川や湖とは非常に異なる。


反対に、海の中の水の量はほぼ同じ量を維持している。


しかしながら、海の水は24時間毎に2度見事な規則性を持って、

 交互に上がったり下がったりすることが観測される。


もし、例えば、港で今水が最大の高さになったとすると、やがては引き始めるだろう。

そして、この減少は、その深さが最低になるであろう終わりまで6時間続く。

それから、再び上昇し始め、同様の増加が、最大の深さになるまで6時間続く。

それは直ちに、6時間の間に再び下がり始め、それから同じ時間をかけて上昇する。

それゆえに約24時間の間に、水は2度上昇し、下降する。

そして交互にその最大と最小の深さに達する。

それが、われわれが干満または満潮と干潮と呼ぶ、この交互の海水の増加と減少である。

そして特に、満ち潮はそれが増加または上昇する間の時間を、
 引き潮はそれが減少または下降する間の時間を意味する。


さらに、満ち潮と引き潮は共に潮汐(潮の満ち引き)という名前に基づく。


この交替がわれわれの現在の論考のテーマである。


まず第一に、上昇中と下降中の間の相違は月の変化に歩調をあわせている

 ということに注目すべきである。


満月と新月のとき、水は1/4以上高く上昇する。


そして3月と9月の春分点と秋分点の時期の頃、この海の交互の運動がもっとも大きくなる。


大きな相違が、海岸の状態により同様に観測される
ある場所では、
 満ち潮は数フィートしか生じない、

  その一方で、他の場所では上昇が40フィート以上となる。

   フランスのセント・マロやイギリスのブリストル港では潮汐がそのようになる。


この現象は水の広大な面積のある大洋で主に確認することができ、

 バルチックや地中海のような境界のある制限された海では、それははるかに小さい、

  ということにさらに注目すべきである。


満ち潮に続く引き潮の間隔は正確に6時間ではなく、約11分多い。


それゆえに、1日後の同じ時間に同じ変化はおきないが、約3/4時間後に下降する。(*3)


その結果、一回りして同じ時間にそれらを引き起こすためには、30日の公転が不可欠である。


であるから、これが正確に月の公転周期またはある新月とすぐに続くそれの間の時間間隔である。


     1760年9月26日


訳注)
*1:手紙1の表より、月までの距離/地球の半径=240,000mile3,982mile60.3倍

*2:今日では約81倍
*3:21世紀の今日では、各地域ごとの潮汐の時間が、潮汐表として気象庁から発表されている。現在の潮汐の間隔は約24時間50分である。

 

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