フリッカーランプとは?


図1:フリッカーランプ
外観
 
1.フリッカーランプとは?

 先日部品の在庫整理をしていたところ、図1のような風変わりな電球を発見。どうやら相当前に購入したもののようですが、当時はこれといった用途も無かったのでしょう、その後お蔵入りしていました。

商品名は“フリッカーランプ”となっています。点灯時の写真も箱に印刷されています



 図2:点灯中 

2.点灯してみると・・・

定格はAC100[V]2〜3[W]となっています。早速確認すべく電源(AC100[V])に接続して見ました。

図2の通り、オレンジ色の光が炎のようにゆらゆらと揺れています。

発光色から判断すると、封入されているガスはネオンのようです。

 しかし、ネオンは真空状態でも、確かこのような低い電圧100V(最大値約141.4V)では放電しなかったはずですが・・・?

 放電といえば、放電物理学。思い出しながら特性表を見て確認すると・・
パッシェンの法則から、ネオンNeのpd積の最小値が約350[Pa・cm]のとき、放電開始電圧Vsが約250[V]となっています。
 家庭の
AC
電源の2.5倍(実効値)もの高さです。当然、このままでは放電は起きません。

しかし既に、管内にアルゴンArを0.1[%]加えると、ペンニング効果(2段階電離)により放電開始電圧が160[V]程度に下がることが知られています。従って、アルゴンの比率をもう少し増やせば100〜140[V]程度でも放電は十分可能となります。

3.ルーツを探る!
 この商品の箱を見ると、海外メーカーの名前が記載されています。 
そこで何か資料になるものが無いか、箱に記載されている
 Aerolux Light社
をPCにて検索してみました。 
 すると、アメリカのサイトでアンティーク販売とアンティーク オークションのみがヒット・・・既に廃止品でしょうか?金額も800円位から5〜6万円!!!もするものまであります。

そこで本家アメリカのウィキペディアを調べると・・・載っていました!

社長フィリップ・J・カヤット(Philip J. Kayatt (1896–1975)氏の下、Aerolux Light社は1930年代から1970年代までニューヨークに存在し、芸術的なガス充填電球を製造、あのニューヨークタイムズにも記事が掲載されたそうです。

 やはり、現在販売されているのは、ライセンス契約され、且つ製作が簡単そうな電球“フリッカーランプ”のみで、他の商品を新たに入手することはできないようです。
以下にアンティーク商品の一部をご紹介します。(図3)



 非常によくできている上、真空管の中に彫刻物を入れて光らせるとは発想もまたすばらしい。ほとんどの商品は一つずつ手作りしていたのではないでしょうか?正に職人技です。

 現在、日本国内ではフリッカーランプしか入手できませんが、ご本家が亡くなった後も40年間も販売され続け、製造終了した商品はアンティークとして珍重されている。独創的で、すばらしい芸術品です!

4.USウィキペディアの解説より

Aerolux gas discharge light bulbs contained low pressure gas, either neon or argon, or a mixture of the two. Also within the bulb were metal sculptures coated with phosphors. These phosphors fluoresced when excited by glow discharge. Because glow discharge occurs readily at 110-120 volts AC, one could use these bulbs in standard household lamps in the United States.

 

The phosphors used in the bulbs were somewhat brittle, necessitating care in handling. Shaking or jarring the bulbs would cause flaking and migration of the phosphors to other parts of the metallic sculpture. Such handling would leave non-fluorescing portions of the sculpture and/or migration of phosphors to other surfaces within the bulb.

 

Aerolux bulbs consumed about 3-5 watts of power. The bulbs had high yield of light produced versus electricity consumed, generally in the range of 50-60 lumens/watt, compared to 12-18 lumens/watt for a tungsten filament incandescent bulb.

 

(訳)
 アエロラックス・ガス放電電球はネオンやアルゴンもしくは両方の混入といった低圧ガスを封入してあった。また管の中には蛍光物質でコーティングされた金属の彫刻があった。グロー放電によって励起されると、これらの蛍光物質は蛍光を発する。グロー放電はAC110〜120Vで容易に発生するので、人は合衆国内で標準的な世帯のランプとしてこれらの電球を使用できた。


 電球内に使われたこの蛍光物質はやや脆く、取り扱いには注意を必要とする。電球を振ったり、軋ませたりすることは、剥げ落ちや金属彫刻の他の部分に蛍光物質が移る原因となる。そのような取り扱いは、彫刻に非蛍光部分を残したり、電球内の他の表面に蛍光物質の移動を起こすことになる。


 アエロラックス電球は約3〜5Wの電力を消費する。電球は、消費電力の対比では、タングステン・フィラメント白熱電球の12〜18[ルーメン/W]に比べると、一般的に50〜60[ルーメン/W]の範囲の高い光量を有した。

 

 

to be continued!

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