自然哲学の諸問題についてのドイツ王女へのオイラーの手紙

 

あなたは今や物体の状態を変えうる真の力の起源の説明から、

 自然に関する知識をかなり前に進めた。


そしてあなたは今、
なぜこの世界の全ての物体が、
 静止から運動へ、または運動から静止への状態の絶え間ない変化を受けるのかを
  容易に理解する状況にいる。


第一に、世界が物質で満たされているということは疑い無い。


この地上では、

 感覚で感じることができる全ての物体を分かつこの空間が空気によって占められている、

  ということは明らかである。


さらに、われわれがある空間を真空にするとき、

 エーテルがすぐ(後)に続き、
  さらに、それは同様に天体が運動する空間を満たしている。


このように全空間が(エーテルで)満たされると、

 もしそれらが入り込むことができなかったなら、

  それは通り抜けるべき他の物体に出会うことなく、
   運動中の物体は瞬時にそれを継続するはずである。


そして、物体のこの不可入性は常に、且つ普遍的に
 全ての貫通を妨害する力を発揮するので、

  そのとき、たとえ全ての物体が同じ状態を維持する傾向を持つにしても、

   われわれが、物体の状態の恒久的な変化を観測するはずであるということは

    全く驚くに値しない。


もしそれらが互いに自由に貫通できるならば、

 同じ状態を根気良く維持することを妨害するものは何も無いだろう。


しかし、不可入性があるならば、
 そこには、それ故に、必然的に、
  結果として全ての貫通を妨害するための十分な力があるにちがいない。


そして、ちょうど必要なものがないのと同様、その結果はない。


不可入性になんら損傷を受けることなく、それらが同じ状態を続ける間、

 さらに、それらは力を出すことなく、それらの状態を維持する。


そして不可入性が活性となり、それに反抗するのに十分な力を備えるのは、

 貫通を妨害するためだけである。


それゆえに、貫通を妨害するのに小さな力で十分なとき、
 不可入性がそれを発揮し、それ以上は無い。


しかし、大きな力がこの目的のために必要なとき、不可入性は常にそれを供給する状態にある。


このように、不可入性はこれらの力を備えるが、

 限定的な力を付与されていると言うことはできない。


不可入性はむしろ環境により、大または小のあらゆる種類の力を供給する状態にある。


それはあらゆる種類の力の無尽蔵の源でさえある。


物体が不可入性を付与されている限り、
これは干上がることの無い源である。


この力は、完全に発揮されねばならない、

 さもなくば、物体は相互に、自然に反する貫通をするはずである。


その上、この(貫通を妨害する)力が一つの物体の不可入性の効果では決して無い、

 ということをわたしは述べねばならない。


それは、常に、直ちに、全ての物体のそれ(物体の不可入性の効果)の結果である。


というのは、もし物体の1つが貫通したならば、

 貫通は、それらの状態の変化に影響する力をなんら必要とせずに、起こるだろう。 


それゆえに、2つの物体が接触するとき、

 さらに、それらが、互いに貫通することなく、その状態を維持できないとき、

  両者の不可入性が均等に作用する。


そして、貫通を妨害するのに必要な力が備えられているのは、
 それらの共同作用によるのである。


そのとき、それらは互いに作用し、
 それらの不可入性の結果であるこの力がこの作用を生み出すと言える。


この力はそれら両方に作用する。


というのは、それらが相互に貫通しようとする傾向をもつので、

 それは甲乙共に反発し、その結果、それらの貫通を妨害する。


そのとき、物体が互いに影響するであろうことは確かである。


そして、2つのビリヤードボールが衝突するとき、
 一方が他方に作用すると言われるのと同様に、
この作用は頻繁にあるので、

  あなたはこの表現方法をよく知っているはずだ。


しかし、一般的に、物体の状態が不可入性に反するようになる限り、

 それが互いに影響することはないということは、慎重に述べられねばならない。


その結果から、それ(物体の状態)を変えうる力は、
 まさにいかなる貫通をも妨害する必要がある。


それ故に、小さな力はこの効果(貫通の妨害)を生じるのに十分ではなかったかもしれない。


さらに、より大きな力が貫通を妨害するであろうということは真実である。


しかし、物体の状態に起こされた変化が、互いの貫通を妨害するのに十分であるとき、

 不可入性はそれ以上作用せず、且つそれは貫通を妨害しうる最小の力の結果である。


そのとき、力が最小であるために、

 それが生み出す効果、即ち、貫通を妨害するために
  それが作用する状態の変化は比例するだろう。


そしてその結果、2つまたはそれ以上の物体が衝突するとき、

 他と貫通することなく、その状態を維持することができるものは無いため、

  常に貫通を妨害しうる最小の力である相互作用が起こるに違いない。


それ故に、予想外に、
 ある者により非常に嘆願され、またある者には非常に激しく攻撃された

  最近のモーペルテュイ氏の仮説の基本をあなたはここに見出すだろう。


彼の原理は最小作用のそれである。


自然の中で生じる全ての変化において、

 それらを生み出す原因は、可能な最小限である、

  というものである。


私があなたにこの原理を説明する努力をしてきたその方法から、

 それが物体の真の性質の中に完全に見出されることは明らかである。


さらに、たとえ嘲りの種にするものは少ないとはいえ、

 それを否定するものは大いに誤っている。


モーペルテュィ氏とは何の友人でもないある人々が、

 折さえあれば、地球の中心へ降下し続ける穴同様に、最小作用の原理をあざ笑うことに、

  あなたはおそらく既に気づいていただろう。


しかし幸運にも、真実は、かれらの戯れにより何一つ害を受けることはないのである。


     1760年11月22日

 

  "Go to Menu "                                        "Next  "