太陽系を構成する物体の運動を決定するために、
水星、金星、地球、火星、セレス小惑星、パラス小惑星、ジュノー小惑星、ベスタ小惑星、
木星、土星、天王星といった主要な惑星と、
それらの衛星、即ち月、木星の4つの衛星、土星の7つの衛星、天王星の6個の衛星とを
区別することが必要である。
これらの11の惑星は主に太陽に向かって引かれているか、
または、それらが太陽に向かわされるその力は、
それらが他の惑星に及ぼす力以上に比類のない大きな力である、
ということをあなたに説明してきた。
なぜなら、太陽の質量は惑星の質量に比べて比較できないほど大きいからであり、
またそれらの相互の引力をかなり大きくするほど、互いに接近することは決してない。
それらが太陽に向かってのみ引かれたならば、
それらの運動は十分規則的になるだろうし、容易に決定される。
しかし、私が話してきたこの弱い力は、
それらの運動において、あるわずかな不規則性を引き起こす。
それは天文学者がしきりに発見したがるものであり、
且つ幾何学者が運動の原理を決定しようと努力するものである。
ここで重要な疑問が人を興奮させる
−すなわち、物体に作用する力が知られているとして、
いかにしてその物体の運動を発見するのか?
そこで、われわれの前に存在する原理に基づくと、
われわれは、各惑星が従わされるその作用を知ることとなる。
よって、地球の運動は、
第一に地球のかなり近くをときどき通過する金星の引力により、
第二に常に大きく離れていながらも、
この惑星(木星)の驚異的な質量のために相当(な大きさ)になる引力により、
何らかの影響を及ぼされる。
火星はときどき地球にかなり近ずくが、
火星の質量はあまりに小さいのでそれとわかるほどの影響を生じない。
さらに、土星は、その質量が木星に次ぐ大きさであるが、あまりに離れている。
月は、その質量が非常に小さいものの、地球の非常に近いためにいくらか乱れを生じる。
昨年現れた彗星は、その距離が最小になったとき、
太陽(との間の距離)よりも地球に7倍接近した。
それゆえに、特にその質量が相当であったなら−われわれが知らない環境だが、
地球の運動を乱した可能性が非常に大きい。
もしこの彗星が地球よりも大きかったなら、その影響はかなりものであったに違いない。
しかし、わたしを信じさせるには、
その外観が小さく、即ちその質量は地球のそれよりも遥かに小さく、
結論として、その影響は(その質量に)比例してほとんどなかったはずである。
しかしながら、われわれが見た彗星は遥か彼方にあった。
その当時、それが最も接近したとき、それはわれわれには見えなかったが、
われわれと正反対側の者(antipode)には非常にきらきらと輝いて見えていたに違いない。
地球の運動に引き起こされる乱れに関して述べてきたことは、
それらの質量や近接に関連して他の惑星でも同様に発生する。
月や他の第二惑星については、それらの運動の原理はいくらか異なる。
この発光体(太陽)の質量は地球の質量の数千倍も大きいが、
月は地球に非常に近く、月がここ(地球)から受ける引力は太陽の引力を大きく超える。
ゆえに、月の運動は地球の運動に従い、
即ち、月はいわば、それに引きつけられたままであり、
つまり、わが惑星のための衛星として月を考えるべきである。
月がわれわれからさらに遠く離れた位置にあり、
月が太陽よりも地球に向かって引かれる力が弱かったなら、
月は主要な惑星となったであろうし、月自体が太陽の周りを公転しただろう。
しかし、月が太陽に近づく以上に、われわれ地球に300倍も近い。
ゆえに、地球が影響する以上に、
太陽が月に非常にわずかな影響を与えるはずである
ということは明らかである。
月は主として2つの天体、太陽と地球により引かれているので、
月の運動の決定は、言及してきたわずかな乱れを除いて、
太陽のみの引力の対象となる主要な惑星のそれよりより一層困難であるはずだ、
ということが明らかである。
従って、月の運動は、全時代に渡り哲学者を大いに困らせてきたし、
その上、かれらは、ある未来の決まった時においても、
天空の月の正確な位置を突き止めることができなかった。
月であろうと太陽であろうと、いずれの食を予報するためには、
われわれは月の位置を正確に突き止めることができなければならない、
ということをあなたは完全に理解している。
さて、実際には食が計算よりも1時間早いか後に起きたので、
以前は食を計算する場合、1時間かそれ以上の誤りが度々あった。
古代の天文学者は、月の運動を決定するためにいかに苦労しようとも、
かれらは常に真実を見誤った。
偉大なニュートンが月に作用する真の力を発見するまでは、
すなわち、われわれの進歩を妨げる多くの障害物を克服した後に
われわれが真実へどんどん接近し始める、
ということはなかった。
わたしもまたこのテーマに多くの時間と注意を費やした。
そして、私が開いた道を追求しているゴッチンゲンのマイヤー氏は
おそらく到達不可能な領域を超えた精度に到達した。*
月の運動に関する正確な知識のように、
われわれが何かを自慢することができるようになって、まだ10年も経っていない。
そのとき以来、われわれは、1分の誤りもなく非常に正確に食を計算できる。
ところが、以前は8分かそれ以上の相違が頻繁にあった。
さらに、言語に言い表せない利益の根源を分析するため、
われわれは、天文学者だけでなく、
幾何学者や航海者も同様にこの重要な発見の恩恵を受けている。
1760年9月13日
編注)*
メイソンの改良に伴うマイヤーのベストテーブル(最良の表)の平均的な誤差は、1783年から1788年に、経度で30”、緯度で14”であった。ところが、1821年における、われわれの現在のテーブル(表)は平均的な誤差は経度で4”、緯度で4”である。−天文学の進歩は非常に急速で一箇所に留まることがない。