自然哲学の諸問題についてのドイツ王女へのオイラーの手紙

 

全ての天体はそれらの質量と距離に比例して互いを引きつける

 というその力に関して言ってきた事から、

  いかにしてそれらの運動、
   そして、ある一定の時間に正確に配置される各天体の実際の場所が決定されるのかを、

    あなたは理解することが可能である。

この天文学には、通過するのか近ずいてくるのかどうか、

 それらの各々があるはずの場所や出現するはずの天体の位置がどこか

  地球からでも宇宙の他のどこの点からでも見られるのかどうか、

   を各瞬間に決定することを可能にするための天体の運動に関する正確な知識が含まれる。


一般的には運動を取り扱う科学は、力学または動力学と呼ばれる。


その目的は、いかなる力によろうとも動かされる全ての物体の運動を決定することにある。


この科学は数学の主要な分野の一つを構成する。


そしてそれを用いる者は、
 最大可能な限りの完成度へ力学を導くために、あらゆる努力を惜しまない。


しかしながら、この科学が精通するこのテーマはあまりに複雑なので、

 これまでそれらの研究におけるわれわれの進歩を自慢できるような立派な話題はないのである。


そしてわれわれは一歩一歩前進することで納得して進まねばならない。


われわれがこの生涯においていくらかの進歩をし始めて以来、
 それほど大した時間が費やされたわけではない。


なされてきたこと(その成果)は、

 この科学の(調査・研究の)遂行において最高の研究者へ1年分の賞金を提供する、

  パリの科学アカデミーに主として帰されるべきである。

最大の困難が天体に作用する多数の力から生じてくる。


もしこれらの各々が唯一つの点に向けて引かれているならば、

 妨害するような困難はほとんど無かったであろう。


そして、1728年に亡くなった偉大なニュートンは、

 私が信頼を置く法則に一致して、

  互いに引力(attractionを有する2つの物体の運動の完全な証明を与えた最初の人であった。


この法則のおかげで、地球が太陽のみに向かって引かれるならば、

 われわれは、調査せずに、完全にその運動を決定可能なはずである。


もし太陽によってのみ引かれるならば、

 同じことが他の惑星、土星、木星、火星、金星、水星に適用される。


しかし、地球は太陽ばかりでなく、あらゆる他の天体からも引かれているので、

 問題は、われわれが注意を払うべき力の大きな相違により、永遠にもっと複雑で困難になる。


しかしながら、それが恒星に対して引かれるこの力を、あなたは無視するかもしれない。


なぜなら、それらの質量がいかに莫大であるにしても、

 それらはあまりに桁外れな距離なので、
  それらが地球に及ぼす力はほとんどないに等しいと考えられるだろう。

それゆえ、地球や他の惑星の運動は、たとえ恒星が存在しなくとも、常に完全に同じであろう。


さらに、太陽の力を除いて、われわれは惑星が互いに他を引き合う力を考慮しさえすればよい。


さて、これらの力は、各惑星が太陽に向かって引かれる力に比べて、極端に小さい。


なぜなら、太陽の質量は各惑星の質量に比べてとてつもなく大きいからだ。

しかしながら、これらの力は距離が小さくなるに従って増加するので、

 4倍以上の力は2倍以下の距離に一致する。

また、9倍以下の力は3倍以上の距離に一致するなど、数の2乗に従う。


わたしは前回の手紙でこのテーマを説明したように、
 2つの惑星が非常に接近することは有り得るだろう。


つまり、それらの引力(
attractiveの力は太陽のそれと等しく、
 否、それを大きく超えるに違いない。


幸いにも、これは、われわれの仮説では決して起きず、
 惑星は常に互いにその距離を維持している。


つまり、これらの引力(
attractiveの力は太陽の引力に比べて比較できないほど小さいのである。


この理由から、このように確かに知られていること以上に、

 われわれの考えを広げることなく、

  われわれは太陽の力によってのみ、

   また、その運動を決定することが容易である方法により、

    引かれる各惑星を考慮すればよい。


しかしながら、これは、われわれが真実に近い結果で満足しておきたいときだけのものである。

というのは、もしわれわれがもっと正確な情報を手に入れたいと望むなら、

 われわれは惑星が互いに作用する
  −天文学者により観測される明らかなちょっとした不規則性を実際に生み出す力−
   これらの弱い力にも注意を払わねばならない。


そして、これらの完全な達成に向けて、天文学者や幾何学者、両者の全ての英知が注がれている。

     
1760年9月15日

 

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