自然哲学の諸問題についてのドイツ王女へのオイラーの手紙

殿下が私の授業、前の手紙で失礼ながら殿下に贈呈した見本の継続を喜んで受けてくださるであろうと、心ひそかに信じておりますので、わたしは、広がりの特別な種類であり、増加と減少が可能な速度に関する考えの説明を続けます。


如何なる物体が動かされるときも、

即ち、それがある場所から他の場所へ通過するとき、われわれはそれを速度によるものとする。


2人の人が、一人は馬の背に、もう一人は歩いて、

 ベルリンからマグデブルグへ進んでいるとしよう。


ここで私たちは、2つの場合において、ある一定の速度という考えを持つ。

だが、直ちに前者の速度は後者の速度を超えるということが断言されるだろう。


そこで、われわれがこれらのさまざまな速さの度合い(速度)を観測する

その相違がどのようにして成り立つのか?という疑問である。


道は馬に乗る彼にとっても歩く彼にとっても同じである。

だが、相違は明らかにそれぞれ同じ進路を進むのに費やす時間にある。


彼がベルリンからマルデブルグまでの途上で費やす時間は少ないので、

馬上の人の速さは二人の速度ではより大きい。


そして、他方の速度はより小さく、故に、かれは同じ距離を旅するのにより多くの時間を費やす。


故に、速さに関する正確な考えを形成するために、

われわれはついに2つの種類の量−即ち、道の長さと費やされた時間に

 注意しなければならないことは明らかである。


それ故に、同時に他の物体が通過する空間を2倍で通過する物体は、その2倍の速度を有する。

もし、同時に、それがその距離を3倍で通過するなら、それは3倍の速度を有する、などと言える。


そこで、われわれが一定量の時間で通過する空間という知識を持つとき、

 われわれは物体の速さを理解するのだ。


自分の歩行の速さを知るために、

私がLytzowリーツォヴ:ベルリンから約1リーグ(約3マイル))へ歩いていく場合、

私が1分に120歩で進み、

さらに私の歩みの1歩が2フィート半30.48m×2.576.2cm)に等しいと

 観測したとする。


そのとき、私は、1分間に300フィート300×0.3048m=91.44/min

さらに、1時間にはその60倍も大きい18,000フィート91.44/min×605.49k/h

の速度で移動するなどとなる。


それ故に、私がここからマグデブルグへ歩いたなら、確実に24時間かかる。

これは、私が歩くことが可能な速度の正確な考え方を伝えるものである。


今や、より大きいまたはより小さい速度の意味することが何かを理解することは容易である。

 

もし急使が12時間でここからマグデブルグへ行ったなら、

かれの速度は私の2倍であろう。(私は24時間かかるので。)


もし彼が8時間で行ったなら、彼の速度は3倍であろう。

われわれは速さの度合い(速度)の非常に大きな違いに気づく。


陸ガメは非常に小さな速度の1例を提供する。


もし陸ガメが1分にたったの1フィートだけ進むならば、陸ガメの速さは私の300倍少ない。

 というのは、私は同時に300フィート進むからだ。


その上、私たちはさらに膨大な速度を知らされる。

風の速さには巨大な変動が認められる。


適度の風は、1秒間に10フィート3.048m

 または1分間に600フィート(≒183mの割合で進む。


それ故に、その速さは私の歩く速さの2倍である。

 

1秒間に20フィート6.096m

または1分間に1200フィート366mで進む風は、より強力である。


また、1秒間に50フィート15.24mの速度で駈ける風は非常に激しく、

その速度は私の10倍だけ大きいけれども、

ここからマルデブルグまで飛ぶには2時間24分かかる。


次は、1秒間に1142フィート0.3048m/フィート×1142=348.08m)

1分間に68、520フィート68520フィート×0.3048m/フィート≒20.9km)で移動する

 音の速度である。

故にこの速度は、私の歩みの速度の228倍の大きさである。

 

次にマグデブルグで大砲を撃ち、

もしその音がベルリンで聞かれたなら、それは7分でそこに到達したのだろう。


大砲の砲弾は、ほぼ同じ速度で移動する。


しかし、その破片が最も遠いところへ落ちたとき、

砲弾は1秒間に2000フィート2,000フィート×0.3048 m/フィート=609.6m)

もしくは1分間に120,000フィート120000×0.3048 m/フィート≒36.6Km)

飛ぶ性能があると想像される。

この速度は桁外れに見えるが、それは、Lytzowリーツォヴへ徒歩で行く場合の私の歩みより400倍大きいに過ぎない。

 

それは地球上で知られる最大速度と同じである。

しかし、天界の動きは非常に計画的であるように見えるけれども、天界にはもっと莫大な速度がある。

 

地球が24時間でその軸を中心に回っていることは周知の通りである。

 

 

私が83マイル83mile×1.609km/mile133.6kmだけ通過することができる間に、

地球表面のどの場所も、さらに赤道下も、

24時間で25020イギリスマイル25,020mile×1.609km/mile40,257km移動する。


従って、その速度は私の歩みよりほぼ300倍大きいが、

 大砲の砲弾の最大可能速度よりも小さいのである。


地球は1年間で太陽の周りを回転運動しており、

24時間で589、950マイル589,950mile×1.609km/mile949,230kmの速度で

回転し続けている。


故に、その速度は、大砲の砲弾の速度の18倍の速さである。


われわれが知っている最大の速度は、疑い無く、

毎分9、200、000イギリスマイルで移動し、

大砲の砲弾の400、000倍の速度を維持する

光の速度である。

1760年4月22日

 

(訳注:オイラーが示した速度の一覧表)

 

 

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