自然哲学の諸問題についてのドイツ王女へのオイラーの手紙

 

私は、妨害するものがない場合、
 空気がより小さな空間に圧縮され、且つより大きな空間に膨張される
  という特別な特徴を授けられた流体であることを証明しようと努力して来た。

バネまたは弾性の名前で知られる空気のこの特徴は、
 真っ直ぐになろうとすると同時に、
  その試みが止むとすぐに再び形を取り戻そうとするバネとの類似から、
   一般的に、全ての物体と共にそれに共通するもう一つの特徴、
    つまりすべての物体は地球の中心へ向かう傾向があるため、
     また、支持されることがない限り、それらが下へ落ちる必然のもとにあることによる、
      即ち重力または重量に伴なうものである。

学者はおおいに分裂し、非常に不確実なこの力の第一の物理的原因に関心を持っている。

しかし、その存在は疑う余地がない。

日々の経験がそれを表わしている。

われわれがその量さえも知っており、また、正確にそれを測定できる。


というのは、物体の重さは強制的に降下させる力以外の何ものでもないのだ。

そして、その原因である、
 またはそれらを強制的に下降させることで全物体に作用する見えない力は、
  われわれには絶対的にわからないのかもしれないが、
   全物体の重さが正確に測定されるので、
    われわれは完全に重力の効果を知っているのである。

どの物体も含んでいる物質が多ければ多いほど、それはより重い。

金や鉛は、同じ容積または大きさの中により多くの物質を含むので、木または羽よりも重い。

しかし、空気は非常に薄く広がっており、厚みのない物質であり、
 その結果、重力は非常に小さいため、通常この特徴はわれわれの感覚にはわからない。

しかしながら、実験ではそれが重力を有するという十分な確信を生む可能性があるだろう。


空気が容器や管の中でどのようにして希薄にされるのか、あなたは既に知っている。


そして空気ポンプによりほぼ完全に空気を空にし、
  さらに容器をかなりの真空にさせることで、この希薄化は達成されるだろう。

さもなくば、あなたは管ABCD(Fig.4)を手に取り、あなたが完全に底に当たるようにピストンFEを差込み、2つの面の間に空気を残さないようにすればよい。


更に進んだ実験を行うため、
 ピストンが前に押されると空気が逃げるように、小さな穴
Gを管の底に開けよう。


それから空気の粒子がピストンと管の底の間に含まれないよう、穴
Gをぴったりと閉じよう。

この手はずを整えたら、ピストンを引っ張ろう。

そして、外部の空気が管の中に入る道を作らせないので、
 管の底とピストンの間には、ピストンを引き続けることにより
  勝手に(空間を)増加する完全な真空が残るだろう。

こうして、あなたは容器内に含まれた空気を排除することができる。


そして、真空に圧を減じたそのような容器は、
 正確に天秤で測ると、空気を満たしたときよりも少ない重さとなることに気づくだろう。

だから、われわれは、空の容器内に含まれる空気はその重さを増すということ、
 さらに、空気自身が重力を有するという、この非常に重要な結論を引き出す。

800ポンド(453.592g/ポンド×800ポンド=約362.9Kg)の重さの水を入れるのに
 十分な大きさの容器があったなら、
  われわれは、この実験により、
   それを満たす空気の本体がほとんど1ポンドの重さしかないことを発見するだろう。


だから、われわれは空気が水よりも800倍軽いと断定する。


わたしは、われわれを取り巻き、且つわれわれが呼吸する
 普通の空気の話として理解すべきである。


というのは、技術の助けにより、
 空気はより小さな空間に強制的に圧縮できるし、
  さらに、それによりその重さも少なくなることをあなたは知っている。

普通の空気の密度を2倍に圧縮した空気で満たされると
 わたしが述べた容器があるとすると、
  それは空のときより2ポンド重いだろう。


普通の空気より800倍も圧縮した空気で満たしたら、
 それは空のときより、即ち、もし水で満たされた場合と同様に、800ポンド重いだろう。

それから、一定の重力を有する空気は、
 この流体の自然の状態ではその重力は非常に小さいとはいえ、
  しかしながら、それは、全ての他の物体と同様に
   地球の中心へ向かおうとする傾向があるにちがいなく、
    その結果、それはこの傾向の邪魔をする全てのものを押すのである。

この理由から、上位の空気は下位(の空気)を押すのであり、
 そして、ついには、その上にある全ての空気の塊の質量から圧力をかけられる。

だから、これらの領域において、
 空気は上位の空気の重力の影響である一定量の圧縮または密度を有する、
  ということが生じる。


もし、上位の空気が多少の重さを有したなら、
 われわれを取り囲む空気は、同様に多少の密度となるだろう。

このように、下位の空気は上位の空気の重さを支え、
 さらに、われわれが上昇すればするほど、
  その密度はより失われ、より希薄になる。


上昇しつづけることが可能ならば、
 ついには空気はまったく無くなるか、
  さもなくば、もはや知覚できないほどに、非常に薄く広がり且つ希薄化するだろう。

その反対に、あなたが非常に深い穴の中を下降したなら、
 下向きに押される空気の質量の増加から、
  あなたは増え続ける空気の密度に気づくだろう。

              1760年5月17日

 

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